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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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 「SATSUGAI」のかけ声がコンサート会場に響く。人気ロックバンドのデトロイトメタルシティのコンサートである。 大量虐殺というライブタイトル名で副題は「なぜ殺す?そこに人がいるから」という物騒極まりない代物だ。更にDMC信者が始末に負えない。メンバーの行動を「全て」好意的に解釈してくれる妄信的・狂信的、かつ熱狂的なオーディエンスの人々でほぼ全員が少なからず悪魔的な化粧を施したり、露出度が高い服またはゴスロリ系ファッションを着たりしており「Go to DMC!!」の掛け声の下、団結力は非常に高い。またDMCを罵倒したり蔑んだりする者には容赦せず喧嘩を吹っ掛ける、DMCの為ならば時と場所を選ばず集結する等、社会的に問題になる行動も数多い。現にゴリラや特強にクレームが殺到し、幹部達の頭痛の種になっている。
 「クラウザーさんに法律なんて関係ないんだ」
「出たぁクラウザーさんの投げキッスだ~」
「キサマ等SATSUGAIするぞ」
「Go to DMC!」
「ファックファックファックファック!」
 DMCファンはライブが盛り上がると自然発生し、信者の結束はこれ以上ないぐらいに固まる。また腕っ節も相当強く、元ボクサーの警備員さえボコボコにしDMCを否定したり逆らったりする者はたとえ子供であっても暴力を振るい粛清する。過激な追っかけ女性ファンは特にグルーピーと呼ばれる。
「俺は地獄のテロリスト 昨日は母さん犯したぜ」
「明日は父さんほってやる」
「殺せ殺せ殺せ 親など殺せ」
「サツガイせよ、サツガイせよ」
「思い出を血に染めてやれ」
「俺には父さん母さんいねえ、それは俺が殺したから」
「俺には友達恋人いねぇ それは俺が殺したから」
 それだけでも凄まじいがファン達の暴走もひどい。「恨みはらさでおくべきか」では更にハイテンションになる。 「貴様の罪は俺が罰する 俺は地獄からの使者貴様の尻を八つ裂きじゃー!」
「恨みはらさでおくべきか、恨みはらさでおくべきか」
「殺害せよ!」
「貴様の尻を八つ裂きじゃぁー!!」
 ヨハネ・クラウザー2世と名乗る頭に金髪のフルウィッグ、顔を白塗り・くま取りにメイクして額に殺の文字を書き込み、特撮の悪役の如きコスチュームにマントをまとって扮する異相の怪人がコンサート会場を煽る。曰く、彼はこの世の全てを支配する本当の悪魔なのだそうだ。
 「クラウザーさん! 」
「メタルモンスターに力を与えろ!」
 盲信そのもののファン達が暴れ出す。中には老人までいる。
「シゲおじちゃん、暴れようか」
「オロロロロ~、デーエムセー万歳!」
 ブリーフ一丁で踊りながらDMCを称える旗を振る彼。その他にも同様の格好をした老人達が会場中で旗をふる。更にサングラスにレーザー服をまとった筋肉質の男が腰を振って煽る。
「DMC、フォー!!」
「シャチュガイしぇよ!」
「次はこいつだぜ、メス豚交響曲だ!」
 メス豚交響曲も何ともおぞましい。究極の女性蔑視を込めた鬼畜曲である。小声で少年が少女に囁く。
「きらりちゃん、これはヒドいよ」
「イヴァンさんも顔をしかめるよね」
「下半身さえあればいい」とサビで繰り返す彼ら。
「俺の前に平伏せ女ども 指輪も服も顔もいらねぇ」
「言葉も心も愛もいらねぇ」
「下半身を突き出しな下半身さえあればいい!*3」
「そう下半身さえあればいい! 下半身さえあればいい!*6」
「メスは豚だ!!」
 親子連れの一家がメス豚交響曲を歌い、踊り出す。幼女に至っては水着で踊り出す始末。ちなみにその幼女はルナという。
 だが、彼等は全く知らなかったのだ。彼らDMCの悲惨な実態と闇の陰謀に。魔王なるシングル「グロテスク」のカップリング曲が流れ始めた。 
 「全ての女をレイプせよ メス豚どもを売り飛ばせ 犯し放題 俺は魔王」
 「女は全て俺の奴隷 犯りたい時に俺は犯る」
 「そう犯し放題 俺は魔王 人間はみな肉の塊 妬んで憎んで殺し合い 悲劇の雨を降らすのだ」
 「ジジイババアは抹殺し ガキ共を奴隷とせよ おぞましい世界今ここに」
 「魔王! 魔王!」
すっかり乗ってきたところを中年男がステージに登る。
「お次はスパンキン風林火豚だ!」
 中年男の尻を平手でひたすらブッ叩く過激パフォーマンスが始まった。男もかなりのマゾヒストのようで快楽の表情だ。
「疾きこと風の如く 徐かなること林の如く」
「侵掠すること火の如く 叫ぶこと豚の如く!」
  目も当てられない苦々しい表情で電話をかける少女。
「もしもし、月島です。高野CEOに繋げて頂けますか」

一方、会場の外では…
「何あれ!?ひどいコンサート…」
「ごめんなさい、ランカさん。人気のバンドって聞いたからつい誘ってしまって…」
「ううん、気にしないでよナナちゃん。私は大丈夫だよ」
 地元、美星学園の学生であるランカ・リーと松浦ナナセはコンサートの内容にウンザリし、逃げるようにして会場から抜け出てきたばかりであった。
「それにしても余りに下品すぎます!」
「ホントだよ、何であんな最低なバンドに人気が集まってんのかな?」
  ランカは海外トップアーティストの一人、シェリル・ノームに憧れてアイドルを目指し、一度全日本テレビが主催するアイドル発掘番組に応募してオーディションを受けたことがある。しかしその実態を目の当たりにして途中で辞退した。その時偶然別の番組に出ていた愛野美奈子とシェリルに遭遇、自分が見てきたこととアイドルになりたいという希望を話すと「だったらもっといい所がある」と言って村西芸能事務所を紹介してくれたのだった。現在、彼女はそこに所属するアイドルの卵なのである。
「私、あの時全日本テレビのオーディションを辞退してよかったと思う。もしあのまま受け続けて合格していたらあのバンドが歌う内容のような目に遭ってたかもしれないから」
「私も最初ランカさんが辞退した時はショックでした。でも今のコンサートを見て確信しました、あれでよかったんだと」
「ナナちゃん、私はみんなに感動を与える歌を歌う。あのバンドみたいにただ熱狂するようなものじゃなくて心から感動する歌を歌いたい。だからあのコンサートはある意味反面教師になったと思うよ」
「ランカさん…私も応援します、あんなバンドに負けない歌、貴方ならきっと歌えます!」
「ありがとう、ナナちゃん。もうここ離れよう」
「そうですわね、ここのファンに会ったら何をされる分かりませんわ」
  二人は走ってその場から去っていった。

 
 翌日の横須賀マリナーズポートガーデン。
  運営法人マリナーズスクエア株式会社の事務所である。
  マリナーズスクエアはGINの財前丈太郎男爵がホームレスの雇用促進にとリアルファイナンスに開発してもらった商業施設だった。傘下企業の丸三はその見返りに最大級のショッピングモールを形成した。アメリカのサンデーキャピタルはそれで共同体を形成したいと申し出、そしてセラミックキャピタルとも提携し、日米大連立ファンドとして生まれ変わったセラミックキャピタルが誕生した。
 セラミックキャピタルから派遣されている福澤ウィリアム太郎社長が事務所に入ってきた。サンデーキャピタル出身の経営者である。
「おはようございます。随分なコンサートだったみたいで」
「元々覚悟していたさ。あれでもかわいいものさ」
「よっ、お疲れ様」
 そこに入ってきたのはメインテナントの丸三の社長の花岡拳。
 「金の為とは言え、我ながら呆れてしまうさ。クレームでヘトヘトだ」
「まあ、いい教訓にはなったわけね」
 皮肉混じりで呟く井川泰子副社長(高級食品ストア事業部管轄)。塚原為乃介会長が戒める。
「今日は世界模造品博物館の展示品確認でお客様が来るから、しっかり頼む!」
「社長、大変です!!」
そこに清掃員が駆け込んできた。
 
「一体これはどういう事だ!」
 世界模造美術館開設準備に入ろうとしていたインディ・ジョーンズ博士と父ヘンリーが驚いている。 スポンサーであるウォルター・ドノバンが厳しい表情だ。年を取った清掃員がびっくりして助けを求めていたので来たら自殺した若い男の死体があった。
「これは自殺のように見えているが、疑わしい」
「ドノバンもそう思うのか」
 インディの助手の一人である良き巨漢のエジプト人であるサラー・アサムが聞く。
「自殺にしてはうまく出来ているわけだ。むしろこれは殺しである疑いが高まったぞ」
オーブ軍のフォーゲル二佐がいう。
「Jr.、これを見ろ」
 ヘンリーが声をかける。苦笑いしながらインディは動く。にやつくのはヘンリーの盟友であるマーカス・ブロディ。ガロード・ランとティファ・アディールが首を傾げる。
「Jr.?先生、どういうわけで」
「インディの本名はヘンリー・ジョーンズ・Jr.なのよ。昔飼っていた愛犬がインディアナからインディと名乗っているの」
  マリオン・ジョーンズ(インディの妻。父レイブンウッド教授はインディの師匠である)がフォローする。
「あいつとはいろいろな思い出があったからな」
「インディアナからインディと名乗るなんてカッコいいね」
  呼ばれた彼らが見たのはバッチだった。ティファが手袋をつけて袋に入れる。
「これ、調べましょう。間違いなく手がかりになります」
「これは関東連合議員が身につけているものだ。インディ、これは間違いなく殺しだな」
インディの好敵手で博物館館長に内定しているルネ・エミール・ベロックがいう。考古学の人材育成ではずば抜けていて沢村大を育成した。
「こうなると偉大なるヒロに相談しないと大変ですね」
「ヒロ?誰なの」
エルザ・シュナイダー・ベロック(ルネの妻。ヘンリーの助手の一人)が首を傾げる。アーノルド・トート(オーブのウルフライというあだ名があるほどキラにゴマをするがしっかり者で『キラの耳』の一員)が即答する。
「GINの高野広志の事でしょう」
「なるほど、彼なら機動性が高いからな。アディール嬢は彼のことを知っておられるのか」
デートリッヒが頷く。

「ウウム…。首吊り自殺か。だが、変だな。あまりにも汚れていない」
  警察官が首を傾げる。世界模造品博物館の建設現場近くで派遣会社『パッカードベルのスタッフが自殺していたのである。昨日のDMCのコンサート会場『フリートポート』で行方不明になって死体で見つかったのだった。藤堂俊介警部は石塚誠警部補と話し合う。
「ボス、これはゴリラに繋ぎましょう」
「そうだが、これは難しいぞ。俺らは確認だけで上からは自殺案件だろうと言われている」
「これは殺しですよ、間違いない!」
  叫ぶ石塚を黙らせようとする藤堂。そこに入ってきた人物。
「GINの財前丈太郎だ。ここからは俺らに任せとけ」
「財前、何故お前がここにいる」
 驚く藤堂を無視し、丈太郎は手際よく調べる。
 
同じ頃…村西芸能事務所では…
「…嘘でしょ…」
 ランカは新聞の記事を読んで震えていた、そこには世界模造品博物館の建設現場近くで派遣会社『パッカードベル』のスタッフが自殺していたというニュースが載っていたからである、しかもその被害者は昨日のDMCのコンサート会場『フリートポート』で行方不明になったというのだ。
「どうしたの?随分顔色が悪いけど」
 月島きらりのマネージャー、雲井かすみが彼女に尋ねる。
「あ、かすみさん。…実は…」
とランカは彼女に昨日DMCのコンサートに友達と行った事を話す。
「そうだったの…途中で出て行ったのは正解ね。あのバンド、悪乗りどころか、かなり過激なことをやっているって聞いたわ」
「かすみさん…私、怖いんです…もしあのままコンサートにいたらと思うと…」
「え!?ランカさんもあのコンサートに行ってたの!?」
 そこへ月島きらりも来て、二人の話を聞いて驚く。彼女はランカにとっては先輩にあたるが年下なので『さん』付けで呼んでいる。
「ええ、彼女も行ってたそうよ」
「何か顔色悪いよ」
「…これ」
とランカは震えながらきらりに今まで見ていた新聞の記事を見せる。
「!!これって」
「なるほど、貴方が震えるのも無理は無いわ。いつかこんなことになると思ってたけど」
「高野CEOも『ここまで下劣なコンサートは無い』と顔を顰めてたし」
 きらりとかすみが話し合っている間もランカは恐怖感に苛まれていた、彼女は心の中で呟く。(私…もし、あのファンに目をつけられていたとしたら…どうしたらいいの?助けてよ!『骸骨おじさん』…)
 

「…ふ~む」
 その日の夕方、オーブの自宅でくつろいでいたオーブ国立オーケストラの指揮者であるブルックはパソコンで自分宛のメールを見て腕を組んでいた。そのメールの差出人はあのランカ・リーであった、そう彼女が助けを求めていた『骸骨おじさん』とはブルックのハンドルネームだったのである。何故、このハンドルネームなのかと言うと彼は痩身だからである。因みにランカはブルックのブログの読者であり、彼女はアイドルになる夢を彼に語った時に彼から『それならば私も応援いたします、貴方の歌が人々を感動させることができるといいですね、ヨホホホホホ(笑)』と応援のメッセージを送られたことがきっかけで全日本テレビのオーディションに出ることを決めたのだった。
「これはまた…とんでもない所を見に行ったものですね…」
 ブルックは紅茶を飲みながら呟く。彼もDMCのよからぬ実態を音楽関係の筋から聞いて知っていた。
「…ランカさん」
 彼は最初、ランカのコメントを見た時、会ってもいない彼女を何故か娘のように思えた。それ故彼女に親しみを抱き、応援のメッセージを送ったのだった。それからも彼は彼女を自分の娘のように送られてくるコメントに丁寧に回答していた。今回のメッセージでも彼女の苦しみが痛いほど見てとれる。
(私に出来ることといえば…)
 彼はそう思いながら彼女へ返事を打ち込む。
『ランカさん、貴方が見に行ったというバンドのことは私も聞いています。あのバンドの酷さには私でさえ目に余ります。貴方のいる関東連合へは何時行けるかどうか予定は分かりませんがもし貴方の中にある彼らへの恐怖が取り除けないようならば私のコンサートに来てください。私に出来ることは貴方のお話を聞くことしかできませんが何か力になれるはずです。貴方に会えることを楽しみにしてますよ』
 


「さて…始めるとするか」
「つまり俺達は年貢の納め時ってわけか」
「士君!!何を暢気なことを言ってるんですか!?私達は殺されるんですよ!!」
「じゃあこの状況をどうにかできるのか?夏海」
「そ…それは…」
 『ダークギース』の面々に拘束された士達四人は東京港区の埠頭に連れてこられた、既に夜である。
「じゃあな、あの世で達者で暮らせ」
と彼らが銃を士達に突きつけ、引き金を引こうとしたその時である、
「そこまでだ、傭兵共!!おとなしくそいつ等を解放しろ!!」
 周りが急に明るくなり、彼らの周囲を多数の人と車が囲んでいた。
「チッ、警察か!」
「それにしちゃ気づくのが早すぎるぞ」
「んなこたあ、どうでもいいけどな…」
 『ダークギース』の面々は戸惑う一方、
「士君!助かりますよ!!」
「早かったな…ジェス、お前か?通報したのは」
「俺じゃない、そんな隙があるもんか。あの状況で」
「私でもありませんよ」
 士達もある意味、戸惑っていた。助かる道が出てきたがその理由が分からなかったからだ。
「おめえ等にもう一度言う、人質を解放しろ!!」
と拡声器で叫んでいるのはGIN潜入捜査班『仕事人』のリーダー、中村吉之助だ。
「ハッ!お前等こそ何も分かってねえな!!俺達がこいつ等を消そうとした事を察知したのは褒めてやるが状況は何も変わってねえんだよ!!」
とアリーが夏海に銃を突きつけたまま怒鳴り返す。が
「ズバリ、そうはならないんだよな」
と同じくGINメンバーの一人、香坂連が中村に代わって言った途端、
ズキューン!! ズキューン!!
「ウッ!!」
「何っ!?」
 アリー達が手にしていた銃が全部飛んだ。ゴリラの伊達健、倉田省が狙撃したのだ。
「今だ、走れ!!」
 石原軍平の叫びに反応して夏海が彼に向かって走り出す。
「そうはさせん!!」
とヤイバが手裏剣を投げようとした瞬間
「ムッ!」
 別の方向から手裏剣が飛び、ヤイバの頬をかすめた。
「その台詞はこっちのほうだべ!!」
と叫ぶ二代目月光。
「フン、またもや出てきたか小便小僧」
「当たりめえだ!!俺はオメエを捕まえるまで何度でも現れてやるべ!!」
「ヤイバ様、いやヤイバ!!覚悟!!」
「ほう、シズカも来ていたか」
 ヤイバと二代目月光、シズカがにらみ合ってる間にも
「おいヤイバ!!何を無駄話してやがる!!奴等逃げるぞ!!」
 ドリスコルが叫んだように士達が逃げていく。
「くそっ!!せめてあのジジイでもーっ!!」
とアリーがナイフを栄次郎に向けて投げようとした時
「そうはいくか!!」
とジェスが体当たりを横からしかけて彼を倒すや否や反転してGINの元に走っていった。
「これで形勢は逆転だな」
「チッ!!やむをえん、応戦しろ!!」
 ヤイバは車からマシンガンを取り出すと仲間に投げ渡した。
「よっしゃ!!やっちまえーーっ!!」
 彼らは引き金を引いて撃ちまくる。
「まずい!!機動隊、前へーーっ!!」
 軍平は応援要請によって駆けつけた機動隊を前に出す。彼等は盾を構えて防御した。
「こうなったらこっちも応戦だ!!」
「よっしゃ!!マッハで捕らえるぜ!!」
 江角走輔が叫ぶ、こうして銃撃戦が始まった。
 

 「おい、マジでヤバイぞ!!このままじゃ弾が尽きる」
 「ヤイバ!!お前の得意な忍術とやらで何とかしろ!!」
 しかしヤイバは二代目月光、シズカと戦いながら
 「無理だな、見ての通りだ」
と仲間に言い返す。
 「チッ!何てこった、弾切れか!」
とドリスコルが隙をついて弾薬を補給しようと車の中に駆け込んだとき、
『ピーピー…おい!…ガガガー』
と車に積んでいた無線機から声がした。彼は無線機を取る。
「チッ、こんな時に…誰だ!?」
『おお、やっとつながったか。さて問題です、船に乗ったある人が海の上で「ここが一番世界で高い所だね」と言いました。さて何故そう言ったのでしょう?』
「その台詞を言うということは謎々野郎か!!こんな時にお前の相手をしてやれるか!!」
『おや、いいのかい?君達を逃がしに来たのに…ここで捕まるのか、残念だよ』
「ま、待ちやがれ!!分かったよ、答えは船がマリアナ海溝の真上にいるからだろ!?」
『ピンポーン、正解。これが分かったからにはどうすればいいか分かるかね?』
「なるほど、お前は今、海にいるな」
『そういうこと、今からそっちに向かうから五分ほど待ちたまえ。なあに、すぐ拾ってやる』
 無線は途切れる。
「おい、野郎共!!五分ほど時間をかせげ!!救援が来る!!」
「来るのか、どうやって!!」
「今に分かる!!」

 五分後…
「おうおう、派手にやってんなあ…」
 エドワード・ニグマはモーターボートを操りながら陸での戦闘を眺めていた。
「ちょっと!何暢気なこと言ってんのよ!!アイツ等逃がさないと私達までヤバイんだからね!!」
と彼に叫ぶメアリージェーン。彼女はドワイヤー、ニグマと共に『ダークギース』の面々を迎える役をやらされているのだ。無論、殺しが失敗した時の用意もしてある。
「分かってるって、んじゃそこの筋肉男頼むぜ」
「おう、まがぜどげ!」
「近づいてきたよ~、やーっておしまい!!」
「アラボラザッザーッ!!」
 ドワイヤーはロケットランチャーを構え、引き金を引いた。
 
パアーーーッ!!
「うわっ!!」
「な、何だ!!?眩しい!!」
 警察側の目の前で突如強烈な閃光が襲う、ドワイヤーが放ったステビンス特製の閃光弾が炸裂したのだ。
「今だ!!飛び込め!!」
「おう!!」
 その閃光を合図に『ダークギース』の四人は海に飛び込み、迎えのボートに向けて泳いだ。
「ヒュー、助かったぜ」
「とんだドジを踏んだもんだねえ」
「全部コイツのせいだ」
とアリーがドリスコルを指差す。
「ほう、まるでお前達が巻き添え食った言い方だな」
「やめておけ、喧嘩なら帰ってからだ。ボスがなんて言うかねえ」
 喧騒な雰囲気を収めながらヤイバが言う。
「チッ、分かったよ…急げ謎々野郎!!」
 こうして『ダークギース』の面々はまんまと逃げ去った…。
 

「クソッ!!取り逃がしちまった!」
「全くだべ!!後一歩のところで…」
「そうカッカしなさんな、奴等ならまた現れるさ」
 『ダークギース』を取り逃がして憤っている走輔と二代目月光を吉之助が宥める。
「んなこと言ってもおやっさん…」
「CEOが言ってたじゃないか、『奴等は戻ってくる』って」
「そりゃ、そうだが…」
「それにしても周到な奴等だべ、無線機までちゃんと壊していきやがった。証拠まで隠滅してやがる」
「う~む…」
 
 一方、助けられた士達は…
「大丈夫ですか?皆さん」
「ありがとうございます、おかげさまで」
「一つ質問してもいいか?」
「どうぞ」
「どうして俺達が拉致されたことが分かったんだ?それとこの場所に来ると分かった理由も知りたい」
「ああ、それっすね。ご近所さんが通報してくれたんですよ」
「ご近所さん?」
「この方っす」
と連が顔を向けた先には…
「あ!!」
「いやあ、どうも。おかしいと思ったんですよ、警察にしては随分荒っぽかったですから」
 そう言って立っていたのは浅見光彦だった。彼の実家は光写真館の近くにあったのだ。
「浅見さんだったとは…何とお礼を申し上げてよいのやら…」
「いやいや、僕も家族も栄次郎さんにお世話になってましたしね。それにしても無事でよかった」
「なるほど、アンタの兄貴は警察の幹部だったな。それにアンタ自身も殺人事件に幾度も関わっている、その経験からの勘か」
「まあ、そんなところですか」
 それにしても何故、浅見が士達の危機に気づいたのか…?彼はその理由を説明し始めた。
 

 話は士達が『ダークギース』に拉致されて車に乗せられるところまで遡る…。
(おや?光写真館に警察…?)
 その日、仕事を終えて自宅に戻る浅見は一台のパトカーを見かけた。丁度その時、
(!!あれは)
 浅見は四人の警察官が士達を乗せようとしているところを目撃したのである。
(はて…あの人達、何かしたんだろうか?それにしても…)
 浅見は首を傾げた、士達を連行するのに手口が荒かったからである。
(何かある…そういえば)
 彼は思い出した、帝都新聞社発行の週刊誌に士が撮った写真が載っていたことを。彼もまた壬生国でのことをそれで知っていたのだ。
(まさか!?大変だ!!)
 彼は携帯を取り出して掛ける。
「もしもし吉田さん、光彦です。兄さんはまだ帰ってませんか!?…え、います?すぐに代わって下さい!!人の命に関わる事なんですよ!!」

「どういうことだ、光彦」
 浅見家の自宅で電話を受けた光彦の兄、陽一郎は怪訝な顔をした。彼は日本連合警察庁の刑事部長を務めている。
「兄さん、兄さんはGINとは親しかったですよね」
「それがどうした?」
「すぐにGINに連絡を取ってください!光写真館の人達が警察らしき人達に連行されているんです!!」
「何!?確か居候している奴がいたな、奴は…」
「門矢士君のことですか?」
「そうだ、アイツが何か問題でも起こしたんじゃないか!?」
「だとしたら余計おかしいですよ。彼の仕事仲間のジェス君もならともかく夏海ちゃんや栄次郎さんまで連行するなんて」
「何だと!!?それを先に言え!!とにかく分かった、急いで連絡を取る。お前はそいつ等を追いかけるような真似だけはするな、いいな!?」
「はい、車のナンバーを控えておきましたからそれも伝えてください!」
と光彦は言うと車のナンバーを兄に教えた。電話を切った陽一郎は再び電話を掛ける、今度の相手はかつての師である松坂征四郎だ。
「警察庁の浅見です…」

 川越の松坂征四郎邸では…。
『もしもし、松坂先生、南です!』 
彼の所にチームディケイドメンバーの一人、南玲奈が電話を掛けてきた。
「どうしたのだ、そんなに驚いて」
『先生、この前チームディケイドの写真を帝都新聞の週刊チャンスが載せましたよね』
「ああ、あの門矢君の写真か」
『先ほどあのダークギースが門矢君達に狙いを定めたらしくて…今脅迫状が届いたんです』「
何だと!?分かった、ワシがすぐ動こう!」
 金髪の美女に目配せすると松坂は立ち上がった。
「財前君に連絡を取りたまえ、写真館周辺から半径100kmで不振な動きをしている男達がいたらすぐに押さえてしまえ!」
 「ハッ!」
 更にそこへまた電話が鳴る。
「松坂だが…おう浅見君か…何!!君の弟がその現場を目撃しただと!!?一足遅かったか…今高野君達にも連絡して助けようとしていたところだ。すまないが君の権限で機動隊を出せるか?」
『分かりました、上層部を動かして直ちに出動させます』
「頼むぞ」
 この後、征四郎から広志へ更にはGINメンバーへと連絡が行き、必死の捜査でチームディケイドを拉致したダークギースを追い詰め、士達を救出したのだった…。



作者あとがき:いきなり74話から始まって驚いている方もいらっしゃると思いますが今までの作品は別のブログに書いておりますのでこれ以前の作品を読まれたい方々は『新生活日記 Neutralizerの移ろい行く日々』というブログに飛んで下さい。 さて今回使った『デトロイト・メタル・シティ』の歌詞は相当酷い物が多いです。でもこれは漫画の中のことで終わらせてはいけません。理由はあの歌詞に同調するかのようなことが現実に起きているからです。いよいよ来月に衆議院総選挙が行われますが今の荒んだ社会を戻す政党をしっかり見極めなければなりません。それでも今の政治家は平然と公約を破るもしくは公約実現の為に強行手段まで構える者が多いのが現状ですけど…。
 因みにニグマが出した問題は多湖輝氏著作の『頭の体操』シリーズから引用しております。
 
今回使った作品

『機動戦士ガンダム』シリーズ:(C)サンライズ・創通 1996・2002・2004・2007

『フロントミッション』シリーズ:製作 株式会社スクウェアエニックス 1996・1997

『仮面ライダー』シリーズ:(C)石ノ森章太郎 2002・2009

『マクロスF(フロンティア)』:(C)河森正治・スタジオぬえ 2008

『バットマン』シリーズ:(C)DCコミックス 1939

『ハンマーセッション!』:(C)小金丸大和・八津弘幸 漫画:棚橋なもしろ 講談社 2006

『スーパー戦隊』シリーズ:(C)東映  2006・2008

『必殺』シリーズ:(C)朝日放送・(株)松竹京都撮影所 1975

『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』:(C)北芝健・渡辺保裕 2003

『北斗の拳』:(C)武論尊・原哲夫/東映映画 集英社  1983

『空想科学世界ガリバーボーイ』:(C)広井王子・東映映画 ゲーム製作ハドソン 1995

『浅見光彦』シリーズ:(C)内田康夫  1982

『インディ・ジョーンズ』シリーズ:(C)スティーブン・スピルバーグ  ジョージ・ルーカス                                                 製作:ルーカスフィルム  1981・1984・1989・2008

『ONEPIECE』:(C)尾田栄一郎 集英社  1999

『美少女戦士セーラームーン』:(C)武内直子 講談社  1991

『きらりん☆レボリューション』:(C)中原杏 小学館   2004

『デトロイトメタルシティ』:(C)若杉公徳 2005

『マネーの拳』:(C)三田紀房  小学館 2005

『ゴリラ・警視庁捜査第8班 』:(C)テレビ朝日・石原プロモーション 1989

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