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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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前編よりあらすじ:ジュウザは左わき腹を撃たれて怪我をしてとある所へ車で移動していた。彼は一度意識を失うも再び目覚めた時に治療を施されて助かったことを知る。 実は彼は『恐竜や』の再建を海原雄山・山岡士郎親子と村田源二郎、久住美紅達の協力を得て計画し、仕事に戻ろうとした時に一人の女性に助けを求められたのだった。その女性こそバットが高野広志のことで取材に応じた野々宮ノノだった。彼女によるとどうもハルヒやサウザー達の話を立ち聞きしていたことを感づかれたらしく、狙われているということだった。ジュウザは『恐竜や』の面々と雄山・士郎親子の力を借りてノノを尾行してきた追っ手を撒くことに成功、秋葉原に向かう。 サウザーの依頼を受けたマフィア『シンセミア』もジャギの協力を得、ノノを追って秋葉原に向かう。 同じ頃、泉佐野にあるヴァルハラ泉佐野病院では院長の財前五郎と友人の里見脩二が恩師である東貞蔵にかけられた濡れ衣のことで話し合っていた…。
 


「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
 ここは秋葉原の一角にあるメイドカフェ『あかねちん』。追っ手を逃れたジュウザとノノはこのカフェに入っていった。二人は奥の席へ行く。
「お帰りなさいませ、ご主人様。何になさいますか?」
 一人のメイドが二人の元に来て注文を聞く。
「ここって煙草吸えるかい?あと『シルバーバトン』って銘柄の釣り竿を売っている店、知らないかな?」
 とジュウザが尋ねる。すると、
「蝙蝠だけが知ってございますわよ」
とメイドがウインクして答える。
「分かった、依頼は携帯で話したとおりだ」
「かしこまりました、特別室にご案内いたしま~す」
 メイドはそう言うと二人を裏口に案内して一旦外に出るとすぐそばにある階段を上っていった。無論、二人もついていく。三人は三階まで上がるとそこにある入り口に入り、とある事務所に入っていく。
「社長、二人を連れてきました」
「ご苦労さん」
「すまないなあ社長さん、アンタの手まで借りることになっちまって…」
「なあに、いいってことさ。美紅さんからも頼まれてるしね」
 そう、二人をこの事務所に案内したメイドこそ私設情報屋『ダークシャドウ』メンバーの一人で二代目月光が『姉貴』と呼んでいるスチールバット(本名:林恵美)であり、『社長』と呼ばれた人物こそ一階の『あかねちん』を経営している企業『スカイフーズ』社長、谷津田である。無論、ジュウザが『あかねちん』でスチールバットに言っていたのは合言葉である。
 
「…とにかく、そのGINのお偉いさんの所へ彼女を連れて行きたいわけね」
「そういうこと、これは依頼料を2割増ししてでも頼みたい事なんだ」
「あのねえ、貴方どのくらい私達にツケてるわけ?二代目から聞いてるけど少しは払ってくれてるみたいだけどまだ残ってるのよ」
 スチールバットは呆れ顔で言う。
「分かってる、分かってるけどさあ…」
「まあ、いいわ、人一人の命がかかってるんだから。依頼料云々言ってる場合じゃないんでしょ」
「ああ」
「それよりもだ、どうやってこの女性を送り届けるかだが…」
と谷津田が言う。
「社長さん、俺は彼女の組織に護衛を頼んであるんだ」
「しかし、それだけではなあ…」
「何言ってんですか、その為に僕達がいるんでしょう」
とページ(本名嶋浩二)呼ばれる若者が胸を叩く。彼と『デジタルキャピタル』社長、中込威は秋葉原の電気街で自作のパソコンを中込が作ろうとしていた際に部品の調達で迷っていたところをページがアドバイスしたことから知り合い、今ではビジネスパートナーとしても信頼関係を持っていた。ちなみにページの妻であるアキラもこの事を知っている。尚、この事務室には谷津田の他、数人の若者がいる。何を隠そう、実はこの事務室は『アキハバラ@deep』というれっきとした会社だったのである。
ガンガン!
「姉貴!いるか!?」
とドアを叩く音と共に男の声。
「蝙蝠は何を目指して飛んでいるの?」
とスチールバットが合言葉らしきことを言うと
「決まってるべ、月夜に浮かぶ虫を食う為だべ」
とドアの外から答えが返ってくる。
「開いてるわ、入って」
ガチャ
「姉貴、何でこんな合言葉言わなきゃなんねえんだべ」
と不平を言いながら入ってきたのは二代目月光だ。
「何言ってんの、偽物かもしれないじゃない。相手はあのヤイバがいるのよ」
「そりゃそうだべが…フィービーから話は聞いたべ。ガリバーがまかない飯だけどどうぞといって差し入れてくれたベ」
と言って彼は持ってきた袋を持ち上げて見せる。
「おっ、うまそうだな」
「あらら、後でお礼言っとかなくちゃ。ところで奴等はどうしてるの?」
「ああ、今この秋葉原を血眼になって探してるべ」
「嗅ぎ付けられたか…ここを探し当てるのも時間の問題ね」
「あの…『奴等』って一体…?」
とノノが尋ねると
「アンタを狙ってる奴等のことだべ。『シンセミア』っていうロシアンマフィアでさあ、表向きは警備会社をやってんだが裏じゃ麻薬の密売や政府要人と関わってるっていう連中だべ。さっき、親父から指令を受けた仲間が調べたんだが、奴等がサウザーって議員からアンタを抹殺するよう依頼を受けたそうだべ」
と二代目月光が答える。
「『シンセミア』…」
「俺も取材で耳にしたことがある。アイヌモシリでのゼネコン事件を覚えているか?その事件にその連中も関わっていたらしい。もう一つ言えば飛び降り自殺したとされる秘書も実は奴等に殺されたと情報もあるぐらいだ」
「そんな奴等がこの女性を追ってるのかよ!?」
と驚くダルマ(本名:牛久昇)。
「だとしたら夜間はまずいよ、今夜はここに泊まって明朝出たほうがいい」
とページ。
「そうだな、今下手に動くと奴等に殺されかねない」
「ああ、姉貴もここで護衛するんだろ?」
「ええ、勿論よ。アンタは老師様にあの二人にも出動を要請して」
「『黒猫』だべな」
「『黒猫』?」
「私達の仲間よ、実力は老師様の折り紙つきだから」

 その頃、ノノを追っている『シンセミア』は…
「間違いありませんぜ、兄貴。このビルでさあ」
「そうか、よくやった」
 彼らはノノの行き先を既に突き止めていた。
「さてヤイバよ、今から襲撃するか?」
「いや、朝まで待て」
「何故だ?良くても夜にでも襲撃すればいいではないか」
「甘いな、向こうとてそれは予測済みだ。それにあそこには俺の古巣にいる女がいる」
「確か『ダークシャドウ』とかいう情報屋…」
「只の情報屋ではない、戦闘能力も備えている連中だ」
「そうか、以前お前がそこにいたんだったな」
「そういうことだ、俺が奴等だったら既に夜襲対策は施してある。なあに、気の緩みは必ず生じる。それまで待つことだ…」
 
 同じ頃…
 「そうか…。まずい事態になってしまった…」
 広志はソレスタルビーイングのトレーズ・クシュリナーダからの連絡を受けていた。
 「国連の抹殺部隊である『ミキストリ』が壬生国で暗躍している。これは君達で言う公権力の越権的使用につながる」
 「そうですね…。俺もあなたの指摘通りだと思います。あのリブゲート関連でこちらも頭が痛い状況です」
 「今日は一日この事でつきっきりになりそうだ、情報の提供をお願いしたい。ちなみにピースミリオンも東京にいる」
 「分かりました」
 広志はこのように秒刻みに等しいスケジュールに追われているのだ。美紅が連絡を入れたくても入れられなかったのだ。
 「財前、ミキストリ対策を大至急組むように!俺は『仕事人』チームに調べるよう指示を出した。財前と彼らで密着して情報の交換を進めろ」
 「とんだことになっちまったな」
 渋い表情で丈太郎が近くにいた本郷由起夫に目配せして動き出す、だが彼らの想像を超える悪夢が更に待ち受けているとは予想しなかった…。
 

翌日の早朝…。
 ジュウザがあかねちん周辺を見回す、怪しげな車と人の気配はない。
「よし、誰も来ていないぞ」
 「ノノさん、気をつけて…。あなたこのままじゃ…」
 「はい」
 だが、そうはいかなかった。
 
「おい、ブンヤ。そこにいる女をよこせ」
「チッ、路地裏に隠れていやがったか」
 ジュウザは舌打ちする、『シンセミア』の部員達が路地裏から出てきたのだ。更には仮面の男と白い覆面をした男が出てくる。
「や、ヤイバ…」
「よう、ダークシャドウ…。あんたらかったるい仕事ばっかやってるな」
「かったるい仕事ですって!?この裏切り者!!」
 スチールバットが反発する。二代目月光も続けて叫ぶ。
「そうだべ、おめぇの仕事こそ汚ねぇ仕事だべさ。親父は薄汚い仕事の為に忍者の手ほどきをしたわけじゃねぇ!」
「フン、汚いと言えばお前の事ではないのか、小便小僧」
「何っ!!」
 ヤイバは二代目月光の癖を知っているので彼の事を『小便小僧』呼ばわりする。
「よく言うわね、尤も私は貴方が心の底に冷えたものを持っていると気づいてはいたけどね。それでも老師様は貴方を高く評価していたのよ!」
「それがどうした、俺は金とこの力を使える機会を手に入れば文句はない、お前らの仕事は下らない!」
「下らないですって!?」
「話は終わりだ、やれ!!」
 その瞬間男達が拳銃を取り出す、二代目月光がジュウザとノノに目配せする。だが、その希望もヤイバの手の中では想定内だった。覆面をかぶった男が襲いかかる、だがジュウザは覆面の男めがけて拳を振るう。
バキッ!!
「グッ!!痛ててて…ちきしょう、やりやがったな!!」
(!!この声…どこかで…)
 ジュウザは一瞬怯む、男の声を以前何処かで聞いた覚えがあり、その声色に心の中の黒い影を抱えているような印象を受けたからだった。が
ドンッ!!
「アンタ!何やってんのよ!!?早く逃げなさい!!」
「あ、す、すまん」
 スチールバットに突き飛ばされたジュウザは我に返る。その間にも彼女と二代目月光は狙撃するスナイパーの腕だけを確実にねらい澄まし攻撃する。そこに
「ジェーン様!」
「このスカポンタン!遅れちまったじゃないか!!ステビンス、ドワイヤー、肉弾戦で行くよ!!」
「アラホラサッサー!」
 アイヌモシリでのゼネコン事件に関わった三人組も駆けつける、『ドクロベー』ことヤイバの指令でこの襲撃に参加したのだ。秋葉原に喧騒の声と銃声が響き渡る…。
 
「パパ、あの人達…!!」
 7歳の李ヨナは拳銃の音に震えていた。彼女は日本に父親の忠文の仕事の都合で生活しており、一応日本で生まれた為に日本籍もある。忠文は韓国中堅財閥リジェンの日本法人の副社長を務めているのだ。
「大丈夫だ、被害はここまで及ばない…」
 一応彼女たちは秋葉原のマンション(2DK)で生活している、だが何か気にかかる。忠文は留学していたときにお世話になり、政治家として活躍していた大学の講師に電話をかける…。
「もしもし、李です。松坂先生、今秋葉原周辺で発砲音が聞こえました。一体何が…、えっ、分かりました、周辺に気をつけて大学に向かいます。それと、今度のリゾートへの正体の件ですが…。いいんですか、分かりました」
 棚の上にある写真には、ヨナが通っているバレエスクールの写真がある。ヨナの先輩に当たる橋場茜と柊舞に挟まれて微笑むヨナがいる。

 その頃…
「秋葉原で狙撃事件が起きたか…」
 広志の目の前で松坂征四郎は電話を受けていた。
 「顧問、どうされたのですか」
 「秋葉原で狙撃が起きている。先ほど財前君が直行したが、支援が必要じゃないか」
 「ええ、ゼオンを向かわせましょう。彼なら、確実なディフェンスができる」
 「あの『雷帝』と異名を持つ男だな」 
「それと、ラオウ夫人とご令嗣はどうされますか」
 「ワシの別荘で庇おう。ちょうどいい、孫の剣星がいるからな」
 「あなたの会話によく出てくる活発な男の子ですか。ひょっとしてヨナって子は…」
 「そう、剣星の遊び相手にどうかなと思ってな。彼女は活気があって、剣星と息が合いそうだ。何ぜ年も生まれた日も同じと来たからな」
 広志は松坂の話に素早く反応する。剣星は松坂が愛人との間にできた娘の子供である。小さな頃から活気があり、幼稚園の時から算数塾に通っている。その聡明さが、やがて大きな困難を克服する力になろうとは松坂も広志も想像すらしなかった。 
 

「チッ、まずいべ姉貴!!これじゃきりがねえべ」
「いいから耐えなさい!!こっちにも援軍は来るんだから。それまでに何とか持たせるのよ!」
 ジュウザがノノを庇い、二代目月光、スチールバットが取り囲む形で今や周囲はシンセミアの刺客達によって追いつめられていた。
「しょっぱい仕事より俺の仕事でも手伝わないか」
「うるせえ!!オメエの仕事は闇社会の仕事だべが!親父はなあ!人々の役に立つ為にこの仕事を始めたんだべ!!オメエ等には分からねえだろうがな!!」
「その奇麗事が命取りなのよねぇ」
 サングラスをかけたメアリージェーン・デルシャフトがニヤリとする。息が荒くなっているジュウザ達。 その時、  
「危ない!!」
 ジュウザがノノを突き倒す。その瞬間、
ズキューン!!
「グッ!!」
 彼は左脇腹に銃弾を受ける、覆面の男が放ったものだった。
「しまった!!」
「大丈夫ですか!?」
「ああ…ノノさん、アンタこそ大丈夫か?」
「わ、私は…私のことよりも!!」
「何言ってる、狙いは…グッ!アンタなんだぞ…」
「チッ、あとちょっとで…でもまあいいか、テメエも始末するつもりだったからな。アイツへの当てつけに」
(!!)
「お、思い出した…ぜ。お前…ジャギだな、拳志郎を妬んでいたという」
 ジュウザは男の声と台詞から自分を撃った男がジャギであることを確信した。
「ほう、俺を知ってたのか。これは好都合だぜ」
「トキから聞いた…お前が…道場継承の…件でケンを…恨んでいたってな」
「そうとも、俺はアイツのせいで人生を狂わされたんだからな!見ろ!!アイツのせいで顔までこうだ!!」
とジャギは覆面を外す、そこには火傷で爛れた醜悪な顔があった。ノノは顔を背ける。
「醜いか、そりゃそうだろうよ!拳志郎の奴が道場を俺に明け渡せばこんなことにはならなかったんだからな!」
「フッ、そりゃ…逆恨みってもんだぜ!ケンはなあ!あの後…」
「ユリアを失ったとでも言いたいんだろ、冥土の土産に教えてやる。ユリアはな、俺が殺してやったんだよ!!事故に見せかけてなあ、ウワッハッハッハッハ!!」
「!!何だと…心も醜くなりゃ顔まで醜くなるっていう言葉を…取材の時に誰かから聞いたが…お前はまさにその言葉がピッタリ…だな」
「うるせえ!!どうせテメエもここで死ぬんだ、その女共々あの世で拳志郎を恨むか奴と関わりあったことを後悔するんだな!!」
 脇腹に手を当てているジュウザをにらみつけながらジャギは銃口を彼に向ける。
「グッ、ここまで…かよ…」

 
 「何だと!?野々宮ノノが謎の集団に追跡されているだと!?」
 多忙でようやく一段落ついた広志は美紅に電話で連絡をした。そこでとんでもないことを聞かされたのだ。
「ヒロ、ゴメンね…、でも…」
「すまない、こちらは国連の暗殺部隊対策で電話に出る暇がなかった…。だが、これは俺の不手際だ…」
「ジュウザ記者が彼女を『あかねちん』という場所まで連れて行くみたい」
「まずいな…。その周辺に手配をかける!」
 広志は眠気すらすっかり消えてしまった。昨日の朝6時に起床して以来仮眠2時間以外全くとれていないのだ。
「財前、秋葉原周辺にGINの特殊部隊を巡回させろ!」
「分かってるぜ!」
 

「どうした小便小僧、息が上がり始めてるぞ」
「クッ…だが二人は殺させねえべ」
 負傷したジュウザとノノを庇い続けながら戦う二代目月光とスチールバットの二人にも疲労の色が出始めた。
「散々手こずらせやがって、だがもうここまでだな。ヤイバさんよ、後の始末は俺につけさせてくれねえか」
「フッ、好きにするがいい」
「あの~、いいんですか?あの男に任せちゃって」
「かまわんさ、俺達の手間が省けるってもんだ」
「そういうわけだ、じゃあな」
とジャギが不敵な笑いを浮かべながら引き金を引こうとしたその時、
ピシッ!
「痛てっ!!」
 彼の銃を持った手に鞭が当たり、銃が弾き飛ばされた。
「そうはいかないわよ!!」
 声のする方向に刺客達が目をやると鞭を持った女と精悍な体つきの男が彼らに向かって走ってくる。
「姉貴!!」
「どうやら来たようね」
「なんだありゃあ」
「チッ、『黒猫』か…」
 ヤイバが舌打ちする。そう、ジャギから銃を弾き飛ばした女の名はセリーナ・カイル、もう一人の男の名は今野淳一、二人ともそれぞれ『キャットウーマン』・『ダークキャット』の異名を持つ『ダークシャドウ』きっての切り札である。
「遅くなってすまない!!」
「セリーナ!一人、負傷者がいるのよ!!」
「分かったわ、ここは私と淳一が引き受ける。貴方達はその二人を」
「分かったべ!!ジュウザ、走れるか!?」
「ああ、何とかな…」
「クソッ!逃がすな!!何としてでも始末しろ!!」
 ニューマークが部下に叫ぶ。
「闇のヤイバ、この裏切り者!」
「フン、コイツ等にも言ったが俺は力を最大限に発揮できればどこに所属しようがかまわないのさ」
「だろうな、月光様もお前に忍術を教えたことを後悔していたぜ!!」
「所詮は年寄りだ、ボケて人を見る目すら霞んだのさ」
「ならば私達が止める!!」
 シンセミアの刺客達を次々とたたきのめし、拳銃をたたき落としながらヤイバとセリーナ・今野は相手に向かって叫びあう。
「ええ~い!お前達、何手間取ってんだい!!」
「ぞ、ぞんなごどいわれでもジェーンざま…」
「この二人、強すぎて僕ちゃん達じゃあ…」
「だったら逃げてく奴等を追わんかい、スカポンタン!!」
「ぞ、ぞうだっだ…」
「アラホラサッサー!」
「チックショウ、竹内!」
「分かってますぜ、ジャギの兄貴!!」
 三人組とジャギ・竹内が逃げていく四人を追おうとする。
「まずいべ、姉貴!!追ってきた奴がいる」
「仕方がないわね、二人で止めるわよ!」
「おう!悪いが二人だけで逃げてくれ、後は任せろ」
「ああ、頼むぜ…」
「お願いします!」
 ジュウザとノノを逃がし、残った二代目月光とスチールバットの二人は身構える。
「死んでもここは通さねえべ!!」
 
「ゴリラ東京中央署・伊達健だ!拳銃不法所持容疑で逮捕する!」
 乱闘の現場に突如、3人の刑事が警告射撃を仕掛けてプレッシャーを掛ける。
「チッ、今度はサツか。全員散れ!!」
 闇のヤイバ、ジャギらシンセミアのメインメンバーは逃げていく。残ったのはシンセミアの末端の兵士達ばかりだ。彼らは一攫千金しか頭にないのだからノノの捕獲もしくは殺害を狙っていた。だが、そうはいかない。ダークシャドウのメンバーが塞いでいたからだ。
「お前達か、『ダークシャドウ』とかいう情報屋は」
「ええ、そうよ」
「GINから連絡が届いている、悪いがお前達にも事情聴取させてもらう」
「分かりました、しかし…」
「分かっている、連絡が来たと言っただろう。事情聴取が終わり次第、お前達の身柄はGINに保護されることになっている」
「それならいいです」
 こうして末端の兵士達は一人残らず逮捕された…。
 

「ヘェヘェ…。派手にやってくれたな…」
 ノノの肩を借りながらジュウザはふらついていた。
「ノノさん…。俺のことは構うな…、早くGINへ行け…」
「ダメです!私の為にあなたが傷つくなんて…」
「俺はダメだ…」
 力尽きて倒れるジュウザ。ノノの悲しい悲鳴が響く。
「誰か助けてぇ!!」
 そこへ車が止まる。
「ユーフェミア様!」
「この二人を車に乗せなさい!何か事情があるみたいね」
 鋭い指示を出すと二人の護衛官がノノとジュウザを車に乗せる…。
 


 時間をジュウザが治療を施された時に戻す…。
「それでは先生、治療代はお約束どおり貴方の口座に振り込ませていただきます」
 ジュウザに治療を施した 顔の一部が青黒い男にピンクの髪の女性が深々と頭を下げていた。
「分かりました、それでは私はこれで…」
「さすがお噂通りの方ですわね、ブラックジャック先生」
「知っての通り、私が高額の料金を取るのは命に対するリスクプレミアです。その代わり責任を持って助ける、これが私の信念ですよ。ユーフェミアさん」
 そう、ジュウザとノノを車に乗せたのはイギリス大使コーネリア・リ・ブリタニアの妹、ユーフェミア・リ・ブリタニアであり、ジュウザを治療した男こそヴァルハラでトップクラスの医師、ブラックジャックだった。更にジュウザとノノがいるのはイギリス大使館である。ユーフェミアは父シャルルとルルーシュ・ランペルージュの不和を何とか解消させるべく和解交渉に当たっていた。あの時はルルーシュの事務所から大使館に戻る最中だったのだ。
「あ、お姉様」
 二人が話している所にコーネリアが来る。
「丁度先生がお帰りになられるところでしたのよ」
「そうか、先生ご苦労様でした」
「いやなに…ああそう、治療した彼のことですがあと一ヶ月ぐらいは安静にしていたほうがいいでしょう」
「分かりました」
「ではこれで失礼致します」
「お姉様、私は先生をお見送りしてまいります」
「そうか、今スザクが来ている。後でお前が拾った二人の処遇をどうするか話し合うことにしよう」
「はい、お姉様」
「行くぞ、ピノコ」
 ブラックジャックは『間裕子』とバッチの入った小学生の少女に声を掛ける。
「は~い、ちぇんちぇ~」
 
「じゃあ、貴方はそれで…」
「ええ、あの人の助けを借りて知り合いに保護してもらおうとしたんですけど…」
「そこを刺客となったマフィアに狙われた、というわけか」
「はい」
 ブラックジャックが帰った後、ノノは応接室でブリタニア姉妹とスザクに今までの経緯を話していた。
「で、GINに連絡を取りたいと言うのだな」
「はい、お願いします」
 すると
「心配するな、実はそのGINからこの大使館にも電話が来てお前達をここで保護していると伝えたぞ。しばらくすれば迎えが来るだろうから安心しろ」
とコーネリアが厳しい相貌を崩して言う。
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
 ノノは目に涙を浮かべて彼女に礼を言う。
「それにしても暗殺とは…あのサウザーには黒い噂が絶えない事は知っていたけど口封じにまで出るとは…」
とスザクが苦い顔で言う。
「確かあの方、副議長とも親しいとか…」
「バロン影山か、彼はギレン・ザビを蹴落とそうと裏で派閥を作っている。だが、この人の話だと…」
「壬生国…あの喪黒と関係があるのではないか?」
「大使、僕もそれを考えてました。恐らくサウザーは壬生国で喪黒という男に有利に働きかける為に資金援助などの工作をしていたんでしょう。そこには彼女の口から出た涼宮ハルヒとバロン影山、他にも数名いるのかもしれません」
「つまり関東連合は壬生国に根を張り巡らそうとしているのか」
「それと議員個人の利権も絡んでいる可能性も大です。サウザーは敵対するティターンズ党とも利権を共有しているという噂もあります。例のシャギア・フロスト議員の前の秘書が自殺した件にしても実はその証拠を掴んだ故に殺されたらしいという情報もあるぐらいで」
「…」
 コーネリアは無言で腕を組む。
「いずれにしても今回の事も党のみんなに耳に入れてもらわなければならない。大使、僕は今すぐルルーシュに彼女の話を伝えます」
「私も参りますわ、スザク」
「それがいいだろう、彼女と記者については私に任せよ」
「はい!」


 数分後…高野広志自らがノノを迎えに来た。
「ヒロ!!」
「ノノ、美紅から話は聞いた。匿うのが遅れてすまない」
「いいのよ、美紅が言ってた。『ヒロは私的に公権力を動かす事ができない』って」
「では電話で話したとおり、彼女はそちらに引き渡す。その代わり、あの記者は…」
「そちらでお願いします」

 「ということで、この男があなたを襲ったわけだ…」
 壬生国の行方不明者のデータベースを引き出してきた広志がノノに写真を見せる。
「間違いありません、それに『ダークシャドウ』の闇のヤイバも関与しているそうです。それとジュウザさんが言ってましたけどこの男の名はジャギというそうなんです」
「そうか…。10年間、大学院に通いながらバイク便のアルバイトをしていて、その際に運んだ荷物が何か危ないモノだった…」
「二人の仕事内容はそれほど重いモノではありませんでした。封筒一つで済みました」
「情報か…。なるほど、SDメモリーカードか、DVD-Rかそのあたりだろうな…それと君が立ち聞きした話か…」
 広志は険しい表情を崩さない。ジャギについては指名手配をかけた。
「CEO、例の『ダークシャドウ』とかいう情報屋についてはいかが致しましょうか?」
「彼らか…一情報屋にしておくには惜しい、確かジュウザ記者にツケがあると言ってたな。よし、それを我々が肩代わりする代わりにここに一チームとして入らないかどうか持ちかけてみてくれ」
「了解!尚、彼らの身柄引き取りも完了しました!」
「任務遂行完了、了解した。ディアッカ、ノノの護衛を頼む」
「俺にわざわざ頼むのはヤバいぜ」
 ニヤリとするディアッカ。しかし実際は妻帯者であることを広志は把握していた。
 

グサッ!
「グオッ!!」 
 ジャギは突如ヤイバに脇腹を刺された。
「愚か者め、貴様がマスクを取らなければこういう目に遭わなかったのだ」
「ま、待てよ…整形すりゃあ…何とか誤魔化せるだろうが」
ガスッ!!
「ガハァッ!!」
 今度は刺された脇腹に蹴りを入れられる。
「フン、貴様みたいなチンピラに出すような金などない。このまま、我々の隠れ蓑として死んでもらう」
「何だと!!話が違う…じゃねえか…」
「何を言ってる、貴様の失態で社長がお怒りでな、『粛清しろ』とのご命令だ」
「おい、竹内…見てねえで…助けろ…」
 しかし、その竹内から出た言葉は非情なものだった。
「悪いね兄貴、俺ぁハラハラ金融に戻ることにしたよ。何せ、俺は誰かさんみたいに顔が割れてないんでね。なあに、あのサタラクラのことは俺とサンダールさんに任せて楽になったほうがいいぜ」
「た、竹内!テッメエ…」
ドゴッ!!
「ウグッ!!」
 ヤイバに鳩尾を打たれ、ジャギは失神した。
「うるさい奴だ、おい手を貸せ。海に投げ捨てるぞ」
「へへっ、了解。兄貴、悪く思わんでくれよ。俺だってサツのお世話になるのは御免でな」
ドッポーン!!
 ジャギは失神したまま、東京湾に投げ捨てられた…。
 


 作者あとがき:実際の社会でも悪行を闇に葬る行為が後を絶ちません。今度の民主党政権がそれを断ち切ることができるのか、我々国民はそれを見定めなくてはなりません。こうした状況を諦めて傍観した事もこの悪行を長引かせる一因なのですから。 果たしてジャギはこのまま死んでいくのでしょうか?今後の展開にご注目!
 
今回使った作品
『北斗の拳』:(C)武論尊・原哲夫 集英社  1983
『スーパー戦隊』シリーズ:(C)東映 2002・2003・2006
『空想科学世界ガリバーボーイ』:(C)広井王子・フジテレビ・東映映画  ゲーム製作:ハドソン  1995
『ブラックジャック』:(C)手塚治虫 秋田書店  1973
『ノノノノ』:(C)岡本倫 集英社  2007
『涼宮ハルヒ』シリーズ:(C)谷川流  角川書店   2003
『フロントミッション』シリーズ:製作 株式会社スクウェアエニックス 1996・1997
『傷だらけの仁清』:(C)猿渡哲也  集英社
『コードギアス 反逆のルルーシュ』:(C)日本サンライズ・コードギアス製作委員会  2006
『機動戦士ガンダム』シリーズ:(C)日本サンライズ・創通エージェンシー  1986・1996・2002・2004
『笑ゥせえるすまん』:(C)藤子不二雄A  中央公論社  1990
『電脳警察サイバーコップ』:(C)東宝  1988
『バットマン』シリーズ:(C)DCコミックス 1939
『ゴリラ・警視庁捜査第8班 』:(C)テレビ朝日・石原プロモーション  1989
『アキハバラ@DEEP』:(C)石田衣良/TBS 2002・2006
『美人刑事と泥棒亭主』:(C)赤川次郎 
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