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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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1

 塔和大における麻薬事件は関東連合だけでなく様々な所で波紋が広がっていた・・・。

「あ、お父さん・・・。うん、ニュースで見たよ・・・えっ、そうなの?・・・うん、分かった。お兄ちゃんには知らせる?・・・うん、それも分かった。私もお客さん達に頼んでみる」
「さくら、藤孝さんから?」
「うん、大学の事件を調べてくれるようジャーナリストの人達に頼んで欲しいって」
 ここは武蔵国川越にあるバー『桜都』。この店を経営している李小狼(リー・シャオラン)・さくら夫妻の元にさくらの父、木之本藤孝から電話があった。
「あんなことになるとは・・・藤孝さんもショックだろうけど、柳沢教授の家族はもっと深刻だろうなあ」
「そうね、特に世津子ちゃんは恋人がああなってしまったんだから」
 時間は夕方、店は開いている。
「あ、知世ちゃんいらっしゃい」
 さくらの幼馴染である大道寺知世が店に入ってくる。彼女は小さい頃からデザインセンスが抜群でさくらの為にいろいろな服を作ってあげていた。今ではその才能を生かし、『DAIDOUJI』ブランドを立ち上げる一流ファッションデザイナーにまでなった。
「さくらちゃん、事件のこと聞きましたか?さぞかしショックだったでしょう」
 友世は心配そうな顔でさくらに言う。
「ほえ?・・・ああ、大学のことね。大丈夫だよ、むしろ柳沢家の人々のことが心配で」
「ホントですわねぇ。あそこの家族にはさくらちゃんのお父さんもお世話になってらっしゃるのに」
「そうだね。あ、そうだ、お父さんからさっき電話がきてね、事件を調べる為にジャーナリストの人達に頼んで欲しいって言ってたよ」
「そうなのですか、私もお手伝いさせて下さいな」
「ありがとう、知世ちゃん。あ、いらっしゃいませ」
 知世とさくらが話しているところへお客が来た。フリーカメラマンの反町誠である。
「こんばんわ、あれ?確か貴方は『DAIDOUJI』ブランドの・・・」
「大道寺知世ちゃんだよ。私の幼馴染なの」
「いや、これは驚いた。ママと幼馴染とは・・・」
「あ、反町さん。いい所に来てくれましたね。実は頼みがあるんですよ」
 小狼が反町に言う。
「マスター、頼みって?」
「塔和大の事件をご存知でしょう」
「ああ、あの事件か。俺もどうも臭いと思っていたところなんだ」
「実はその事なんですけど調べてもらえないでしょうか?藤孝さんから頼まれましてね」
「いいけど、あの男もいるじゃないか。そいつにも頼めば」
 拳志郎のことである。
「もちろんですよ、というより柳沢教授が頼んでいます。あの人、塔和大の卒業生ですし何より柳沢教授に恩義がありますから」
「そうか、そうだったな。よし、天馬と俺と同業の姫矢にも頼んでみるか。後は・・・」
 と反町が言っているところにさらに二三人お客が来た。
「いらっしゃいませ」
「よう、ジェナスじゃないか。ラグナにセラも一緒か」
「反町さん!お久しぶりですね。」
「ああ、元気そうだなセラ、姫矢には会ったかい?」
「ううん、でも元気そうみたいね。反町さんの顔を見たら分かるもの」
「ハハハ、こりゃまいった」
「ところで何か話してたみたいだけど」
 とジェナスが言う。
「塔和大の事件のことだよ。マスターから調べて欲しいってさ」
「あれか、確か薬害疑惑にも関係あるってもっぱらの噂だからな」
 とラグナ。
「ビアスの独壇場だな。大学もあのサザンクロス病院も」
「いやジェナス、彼の後ろには『元斗会』がいる。彼らが真の黒幕というわけだ」
 反町は顔をしかめて言った。

 同じ頃、そのビアスはというと・・・
「へっへっへ教授、ありがとうございます」
「いやなに礼を言うのは私だよ、竹内君。君がうまくやってくれたおかげで今の地位をつかむことができたのだから」
「なあに、礼ならここにいる兄貴に言ってくだせえ」
 ここは千葉市内の、とある居酒屋。この店の個室でビアスが二人の男達にお金を渡していた。その内の一人は映画『犬養家の一族』に出てくる佐清(すけきよ)のような覆面をしている。
「クックック、拳志郎め。これはまだほんの序の口さ、復讐はこれからだ」
「随分執念深いな、ジャギ君。それほどまでにあの拳志郎が憎いのかね?」
 ビアスが覆面をした男に尋ねる。
「教授、こういう顔になれば誰だって復讐が沸き起こるものでさあ」
 とジャギは覆面を取る。余りに醜悪な顔にビアスは思わず目をそむけた。
「本来は俺があの道場を継ぐのが正当だった。ラオウもトキも壬生国の国会議員になったし、ヒョウも本家を継いだのだからなあ。しかし、師であるリュウケンが後継者に拳志郎を指名しやがった。俺が兄貴分であると同時に実力は俺の方が上なのに!」
 ジャギはそこまで言うと机をドンと叩いた。尚、彼のいう道場とは壬生国にある拳志郎の実家が開いている拳法道場のことであり、ヒョウは拳志郎の実兄である。ちなみにヒョウはカイオウの妹であるサヤカを妻にしている。
「そこで俺は奴を殺そうとしたが隙がねえ、そこでユリアに目をつけた。あの女を始末すれば脅しにもなるからな。ユリアの始末はうまくいったがあの時に運悪く車が炎上して火傷を負ってこんな顔になっちまった」
 そう、二年前の事故はジャギによる殺人だったのだ。それもとある企業からの依頼であった。
「・・・・・」
「へへっ兄貴、面白くなってきましたなあ」
 ともう一人の男、竹内が言う。
「何言ってやがる竹内。これから面白くするのよ、これからな」
 とジャギが不敵な表情で言う。二人のやりとりを聞きながらビアスは過去の回想にふけっていた。

(・・・あれはいつ頃だったか・・・)
『馬鹿な!患者が死んだだと!?そんなはずは・・・』
(そう、あの時私は壬生国の大学病院で手術に失敗した。当然、責めを負うことになったわけだが・・・、後々の事を考えると苦悩し、自殺まで考えるようになっていた・・・)
『教授、お久しぶりですねぇ。随分、暗い顔をなされているじゃありませんか』
(そんな時だった・・・大学病院時代の弟子であったスパンダムと再会したのは・・・)
『ほほう、なるほどねぇ。教授、もしよろしければ私が手助けいたしますが』
(彼は成績が最悪だった、しかし立ち回るのは何故かうまかった。大学卒業後、確か彼は父親であるスパンダインの企業に入った。それがCP9製薬だったわけだが・・・)
『教授、何を躊躇ってらっしゃるんです。貴方は不祥事を隠すことができ、私はこの日本に進出することが出来る。お互いこんな得することはないじゃないですか』
(私は迷った・・・スパンダムの提案というのは私の医療ミスを改ざんする代わりに彼の会社のスポンサーになることだった。これはかなり魅力的だったし、転落を免れる唯一の手段だと思ったからだ)
『教授!本気ですか!?あいつの企業はかなりの不正をやっているのですよ。ただでさえ、真面目に学問をやらずあっちこっちと立ち回っていただけの奴の不正に手を貸すのですか!?』
(当時の弟子であった月形剣史、仙田ルイ、尾村豪らに相談してみた・・・案の定スパンダムの提案に反対したな。彼らはスパンダムを嫌っていたからだが・・・その上、彼らと同期であった四宮蓮と北見柊一もスパンダムの事を勘付きはじめたことにより焦った。そして・・・)
『ダーハッハッハ!教授、よくご決心なされましたね。これで貴方も安泰ですよ、首がつながってよかったではありませんか。』
(彼の策謀により私の医療ミスが闇に葬られ、代わりに一人の医師を身代わりにした。この時からだ、私の手が黒く汚れ始めたのは・・・。しかし、もう後戻りは出来ないし、いっそ黒く汚してしまえと心の中で居直ったものだ・・・)
「教授よぉ、どうしたんですか?そんな深刻な顔をして」
 ビアスは竹内の呼びかけで我に返った。
「いやなに、昔のことを思い出していただけさ」
「なあんだ、そんなことか。そんなことより一杯やりませんか、気楽にいこうじゃありませんか」
 と竹内はビール瓶の口を彼に向ける。
「あ、ああそうしようか」
『先生、変わったね・・・』
(!・・・あの少年は確か、ある事故で負傷し私が手術した・・・。何故、あの少年はあんな悲しげな顔をしていたのだろうか?・・・それにしても何故あの少年のことを思い出したのだろうか・・・)
 ビアスはコップを手に取り、竹内が注ぐビールを受けながら突如思い出した少年の事にふけった・・・。

「なんだって!柳沢教授の辞退にそんなことが!?」
 壬生国派遣国会議員、木之本桃矢に父である藤孝から連絡が届いたのは妹のさくらが同じ電話を受けた30分後のことだった。
「桃矢、藤孝さんはなんて?」
 彼の秘書であり、親友である月城雪兎が桃矢に尋ねる。
「父さんのところの大学での事件を知ってるだろう、柳沢教授はビアスの罠にはまったそうだ」
「えっ!?」
「すぐにでも行くぞ、車の用意だ!」
「行くってどこに?」
「トキさんのところだ、あの人の弟分であった拳志郎さんも動いているはずだ。それにトキさんは医療問題にも詳しいからな。父さんまでビアスの犠牲になってたまるか!」
 桃矢は派遣国会議員となったばかりのころ、トキにいろいろと世話になったことがある。それ故、彼の兄であるラオウやカイオウにも会っているが彼らが同じ省内で朽木一派と対立していたこともありトキと共に二つのグループの仲介役もしている。
「桃矢、選挙のほうは?」
「それも気にかかるがまずは大学の事件だ。もしかすると…」
「もしかすると?」
「この国の選挙とつながりがあるかもしれん。あのCP9がリブゲートと提携したからな」
二人は壬生国の行く末に不安を持ちながらトキのところへ向かった…。

2
「なつめ~、お見舞いに来たぞ~!」
 漢堂ジャンが久津ケン・メレ・バエ(本名:的場栄介)、それに二人の少女を連れて真咲美希の娘、なつめが入院しているサザンクロス病院にやって来た。なつめは二週間前に盲腸炎を起こして入院し、手術を受けたのだった。
「ジャン!それに舞にリジェまで来てくれたんだ」
 なつめは大いに喜ぶ、それもその筈、ジャンが連れてきた二人の少女はあの『恐竜や』の店員、白亜凌駕の姪である白亜舞と大野アスカの娘であるリジェだったからである。もともと『恐竜や』のあるホテル『リック』と『スクラッチエージェンシー』のあるビルは歩いて五分の距離にあり、なつめと舞・リジェの三人は通う小学校が同じ事から親友なのである。
「ねぇ舞、『恐竜や』はどうなの?」
「お客さん全然来ない。凌ちゃんやアスカさんがなんとかしようと走り回ってるんだけど」
「そっかぁ、当てがないんだ…」
「え~、あそこダメダメか~?」
「ジャン!ダメダメじゃないの!!」
「ごめん、なつめ」
「くそっ!あそこのカレー、俺好きなのになぁ。親父さんを騙すとは許せねぇ!!あのオカマ野郎!!」
 ケンが憤る、彼も『恐竜や』の顛末を知っているのだった。
「それより、なつめちゃんもう大丈夫なの?」
 とリジェが訊くと
「うん、もう平気。あと少ししたら退院だよ」
「よかったあ、ここ悪い噂が立っているからってママが言ってたから心配したよ」
「あれの事?大丈夫よ、手術してくれた先生があれを使わなかったって言ってくれたから」
「ならいいけど。あ、テレビ見ない?」
「そうね、なんかやってるかなぁ」
 なつめがテレビをつけるとその画面にはボクシングの試合が映っていた。

『さあ、本日のタイトルマッチは小津翼VS鰐亀広樹という好カードとなっております。実況は私、福原一郎がお送りしてまいります。解説はテリー和田さんです、よろしくお願いいたします』
『よろしくお願いいたします』
『さあ、第一ラウンドが今始まりました。おおーっと!鰐亀選手、早くも猛攻を始めた。人気があるだけにすごいですねえ』
『そうですねえ、彼の野性味がある攻撃スタイルは魅力ありますからねえ』
「どこが?理央様のほうがよっぽどましよ。鰐亀なんかただの不良ボクサーじゃないの」
 テレビを見ていたメレが悪態をつく、が
「ぷぷっ、それは言えてる」
 とケンも笑いながら同調する。
「なーんかつまんなぁ~い」
 とジャンが欠伸をしながら言う。
「ホントつまんない、変えよっか」
 となつめがテレビのチャンネルを変えようとした時、
「ちょっと待った!!」
 とバエが叫んだ。
「な、何?」
 とみんなびっくりして彼に顔を向けると彼は自分流の実況中継を始めた。
「さあ~、ここからはこのバエがこの試合を実況いたしま~す。今回の対戦カードはご承知の通り高速で獲物を捕らえる隼の爪のごときパンチを打ち出す小津翼と、かたや『噛み付き亀』の異名を取る鰐亀広樹であります。先ほどから『噛み付き亀』が獲物に噛み付くようにパンチを繰り出していきます。が小津、隼のごとくかわしていく!その目もまさに隼!瞬時に攻撃をかわしていきまーす!!」
「おい、何だ?何だ?」
 バエの実況中継に病室にいた人々も興味を示す。
「さ~あ、今度は小津が反撃に出ました!おおーっと!!右だー!右フックが入ったーっ!!これぞ正しく隼が天空から獲物を逆落としで捕まえる如しーっ!!しかし鰐亀も黙ってはいない!!ダウンしたもののすぐに立ち上がりまたもやラッシュを繰り出すー!!あっ、一発入ったーっ!が倒れない、小津選手倒れません!!」
「な、なんか興奮してきたぜ!」
 ケンは思わず拳を握り締める。
「おっと、ここで第一ラウンド終了ゴングが鳴り響きます。メレさん、如何ですかここまでの戦いは?」
「何で私にふるのよ!アホらしい!アンタのお喋りがうるさいのよ!」
 と彼女がまた悪態をつくが
「おお、いいぞ!そこの兄ちゃん!」
「アンタ、いい実況やってるじゃないの!」
 と周りから好意の声が寄せられる。それに答えるかのようにバエは実況中継を続ける。
「さ~あ、第二ラウンドが始まりましたー!今度は両者フットワークを使い睨み合っている。小津は獲物を狙うかのように相手の出方を伺っている。対する鰐亀は首をすっこめた亀のようだ。おっと、両者まずは軽くパンチを出して牽制しているが…ああーっとここで鰐亀が小津選手の目を狙って左フック!!しかもグリンチだーっ!!これは卑怯!!小津大丈夫かー!?」
「ズルイ!!サイテー!!」
 なつめが叫ぶ。
「更に鰐亀、ここでボディーブローを仕掛ける!!鰐亀、止まりません!小津ピーンチ!たまらずダウーン!!果たして立てるでしょうか?私としては立って欲しいところです」
「そうだ!立てー!」
「立ってくれーっ!小津ーっ!」
「さあ、どうなのでしょうか…おおーっ!!立ったぁ!!皆さんの声援によって小津が立ち上がった!!さあ、試合再開だー!小津が前に出る、前に出る。出たーっ!必殺のコークスクリュー!!鰐亀の顎にクリティカルヒットーッ!!!鰐亀ダウーンッ!!見事に甲羅が壊されたー!!さあどうだ?立つのか?立てるのか?…決まったーっ!!試合終了ーっ!!小津翼、噛み付き亀を見事打ちのめしましたーっ!!」
「おい、兄ちゃん!アンタの実況もよかったぞ!」
「おう、アナウンサーとして素質ありだなー!」
 バエは周りから拍手喝采を浴びせられる。
「いや~それほどでも。」
 バエは照れる、しかしメレは
「はっ!馬鹿馬鹿しい!あんなお喋りのどこがいいのよ!アンタ達、帰るわよ」
 と言う。
「そんな事言うなよ。いい実況だったぜ、なあジャン」
 とケンがなだめる、が言われたジャンは天井を見上げていた。
「…ジャンどうした?上に何かあるのか?」
 とケンが訊くと
「…ゾワだ」
 とジャンは呟く。
「え?」
「ケン!ゾワだ、ゾワがこの上にある!!」
 そう言うや否やジャンは病室を飛び出した。
「おい、待てジャン!!待てったら!!」
「え?何?何なの、ジャンの奴」
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ~!!」
 ケン、メレ、バエが後に続いてジャンの後を追う。残ったなつめ、舞、リジェは呆然と彼らを見送った。

「ちょっとそこの人!病院内では走らないで下さい!!」
 ジャンとすれ違った看護師が彼に注意する、がジャンは耳を貸さずに階段を上る。
「あいつ、どこまで上る気だ」
とジャンの後を追いかけながらケンは言う。
「知らないわよ!そんな事!」
 とメレ。
 四階上まで上がっただろうか、ジャンはそこまで上るとその階の廊下に出て走りとある部屋の前で止まった。
「ここだ…ここにゾワがある!」
 そこは院長室だった。ジャンはためらいもなくドアを開けて入る。
「な、なんだね君は!いきなり入ってくるとは失礼じゃないか!!」
 そこには院長のシンが書類に目を通しているところだった、ジャンがいきなり入ってきたのでビックリして叫ぶ。が、ジャンは聞こえないのか辺りを見回す。
「君、聞こえないのか!今すぐ出て行きたまえ!」
「ここにゾワがあるんだよ!!ゾワが!!」
「ゾワ?何を言っているんだね?」
 丁度そこへ
「あっ、いたいた!いや~すみません。実はですね、コイツこの部屋に盗聴器が仕掛けられているって言うんですよ」
とケンが部屋に入り、シンに謝りながら説明する。
「盗聴器だと!ばかな!」
「いや、信じられないのは分かりますがコイツの勘はよく当たるんですよ。とにかくこの部屋を調べさせて下さい、お願いします」
「……」
 シンはケンに答えずに黙り込む。するとジャンは机にあるペン立てに目を留めた。そのペン立ては時計と一体になっていた。
「ケン、見つけたぞ!あれがゾワだ!間違いない!」
「!!それは!!」
 シンが驚いたのも無理もない、そのペン立てとペンはこの病院の院長に就任した時に師であるビアスから送られた物だったからだ。そんなシンをよそにジャンとケンはペン立てとそれに立ててあったペンを調べる、そして…。
「あったぞ!このペンが盗聴器だったのか!」
 そう、ペン自体が盗聴器だったのだ。
「な…すると…俺は…」
「ええ、貴方は監視されてたんですよ。誰かにね」
「ケン、これスゲー。ペン立てがゾワの充電装置になっていたんだ」
「ああ、しかもこれ太陽電池だ。太陽光ならほぼ無限に盗聴可能だ」
 ジャン達が盗聴器について喋っている時、シンは愕然としてその場に崩れ落ちた。そして呟く。
「俺は…俺さえも…利用しようとしていたのか…このサザンクロスは…。俺は…所詮あいつらの…元斗会の操り人形に過ぎなかったのか…」

「ゲッ!ヤベぇ!ばれちまった!」
「何ッ!本当か!」
 病院の外にあるベンチで座っていた『オボロゲクラブ』のメンバーである椎名鷹介とサーガインは顔色を変えた。
 彼らは『新時代出版社』の密命を受け、ずっと前からこのサザンクロス病院を監視していた。特にここ最近、院長のシンに不審な表情をしている事から調査するよう言われたのだった。ちなみに今回はサーガインが慢性の腰痛が悪化したという事にし、鷹介を彼の息子代わりに装って調査していたのだった。
「いかん、すぐに離れるぞ鷹介」
「ああ、ばれないようにな」
 鷹介はサーガインの腰を気遣うように彼の腰に手を回すとベンチから立ち上がり、まるでサーガインを手助けするように見せかけて歩く。しかし、その芝居をまんまと見抜いた人物が院長室の窓から見ていた。


 3

(あら?おかしいわね)
 院長室の窓から外の景色をみていたメレは下に目をやるなり挙動不審な二人組を見つけた。彼女は理央と行動している事が多い為、人の挙動の細かな点を注視する事が出来る。その二人は一人が腰を痛めているようだがどうもわざとらしいのである。
「ちょっと、そこのお喋り」
 メレはバエを呼ぶ。彼女はバエを名前で呼んだ事はない、彼の喋りをうるさく感じているからだ。
「はいはい、何か?」
「こっち来てあの二人を見てよ。おかしいと思わない?」
「いや別に」
「はぁ、アンタじゃダメね。ケン、アンタが来て見てくれる?」
「俺か?…あの二人ねぇ…ん?そういえばなんか変だな。わざとらしいところがある」
「でしょ?降りて押さえるわよ、あの二人」
「よし!ジャン、行くぞ」
「行くってどこに?」
「メレが怪しい二人を見つけた。そいつら、もしかするとそれを仕掛けた奴らかもしれん」
「え!このゾワを!?」
「そうだ、逃げられる前に捕まえるぞ!」
「あの~私は?」
「アンタは後片付け!それから病室に戻る、会社にも今の事を報告しておきなさい!」
「ま、待ってくれ君達!」
 バエに指示を出していたメレにシンが彼らを引きとめようとすると
「すみません、急ぐので仰りたい事はこのバエに仰っていただけますか。それでは失礼します」
とケンは断り、ジャン・メレと共に院長室を出て行った。シンは呆然と三人を見送るしかなかった。

 一方、鷹介とサーガインは…
「おい、いつまでこのふりをするんだ?」
「シッ!黙ってろ鷹介。とにかくこの病院から抜け出すのが先だ」
 彼らはここの患者を装い、病院の門を目指す。そこへ、
「あの~大丈夫ですか?手助け致しましょうか?」
 と一人の看護師が二人に話しかけてきた、あの魚住愛である。
「いや~大丈夫…」
「おお、丁度よかった。すみませんがタクシーを呼んでいただけないでしょうか。診察と治療が終わったものですから」
 鷹介が言おうとするのをサーガインが遮って代わりに愛に頼んだ。
「分かりました、いいですよ。受付へどうぞ」
 と愛が答え、彼らを受付へ連れて行く。鷹介はサーガインを椅子に座らせ愛と共に受付に行った。

「おい、アイツらだ。間違いねえ」
「どうする?ケン」
「よし、ジャンは出入り口に行け。逃げられないように固めろ、気付かれないようにな」
「分かった」
「メレは俺と一緒に来てくれ。カップルを装うぞ」
「アンタと!?冗談じゃないわよ!理央様ならともかくアンタとならお断りよ!」
「じゃ、友達でもいい。とにかく行くぞ」
「…しょうがないわねぇ」
 ジャンは鷹介とサーガインに気付かれぬよう、出入り口に行く。一方ケンとメレはサーガインの隣に座った。 
 そんな事とはつゆ知らず、鷹介は受付でタクシーの手配をするとサーガインの所に戻ってきた。その時、
「おい、お前。何笑ってんだよ」
 とケンが鷹介にイチャモンをつける。
「?」
「お前、俺達を笑っただろ?」
「な、何言ってんだ!言いがかりはやめてくれ!」
「嘘付け!いいから来い!」
「お、おい待ってくれ。そいつは…」
「オッサン、ちょうどいい。アンタも来てもらおうか」
「な!」
 ケン達が二人を外に連れ出そうとした時、鷹介はケンの足を強く踏んだ。
「イテッ!」
 その隙をついて鷹介とサーガインは出入り口に走る。そこへ
「待て!この野郎!」
 とジャンが立ちふさがるがサーガインが突き飛ばす。
「急げ!鷹介!」
「おう!」
「イテテ、待ちやがれ!」
「ん、もうー!何やってんのよ!」
 ジャン・ケン・メレの三人は逃げる二人を追いかけた。

「クッ!しつこいな。タクシーはまだ来ないのか」
「仕方がない、その辺にいるタクシーを拾うぞ」
 鷹介とサーガインは走る。ところが
「うわっ!」
 鷹介がつまづいて転んだ。
「鷹介!」
 サーガインが起こそうとするが
「ウグッ!!」
 なんと彼はここで本当に慢性だった腰痛を再発させてしまったのである。ケン、メレ、ジャンが駆けつける。
「よっしゃ!チャンスだ!!」
「なんか一人、腰を痛めているようだけど…」
「やっと捕まえたぞ」
 こうして鷹介とサーガインはジャン達に捕まってしまった。


 同じ頃、病院近くのとあるマンション…。
「…そうか、君があの時言いたかったのは私が悩んでいる事と同じだったのか」
「はい、あのホームページを見た時最初は信じられませんでした。でも読んでいる内に恐ろしくなって…」
 このマンションにはあの伝通院洸が住んでいた。今いるのは彼の自室であり、話相手はあの研修医、水野亜美である。彼女はあの時、洸に言い出せなかった事を告白したのであった。
「水野君、つい最近私が手術した少女を知っているね?」
「はい、確か盲腸炎で入院した…」
「そうだ、あの時は幸いにも輸血のみで済んだが、もしあの子が血液製剤を使わざるをえない病気だったなら…」
「『エニエス』以外の物を使っていたと?」
「ああ、そうだ。そういえば君にはお姉さんがいたね」
「はい、姉は東大で知り合った村上さんという方と結婚しましたけど」
 亜美の姉の名は遥という。彼女の夫である村上直樹もまた医師なのだ。
「そうか、今はどこに?」
「ヴァルハラです。義兄さんは以前別の大学病院にいましたがそこでの丁稚奉公に嫌気が差していたところを堀江烈という人にスカウトされたのです」
「なるほど、ヴァルハラか…。ならば君に頼みがある」
「義兄さんに会いたいのですか?」
「ああ、私も今の病院に嫌気が差した。あそこは元斗会の私物だ」
「分かりました、姉に話してみます」
「後は反町と天馬か…」
「お知り合いですか?その方達は」
「ああ、反町誠はフリーのカメラマン、弓道天馬は『ゴッドフェニックス運送』の配達員だ。私と親しいし彼らも情報に携わる仕事をしているから協力を頼もうと思う。特に反町はジャーナリストにも交友関係があるから大いに助けてくれるだろう」
 ちなみに彼らと洸は高校時代の同級生である。
「…先生。私はこの職業に憧れて塔和大学に入りました。しかし…その大学も病院もここまで腐敗しているとなると…私は…」
 その言葉に洸が答えようとした時、電話が鳴る。
「はい、伝通院です。…魚住君か…えっ、何だって!?院長室に盗聴器が!?…そうか、こっちにも仕掛けられているかもしれないと思ったのだね。ありがとう、よく知らせてくれた。私も気をつけよう…分かった、それじゃ」
 洸は電話を切る。しかし、洸と亜美の話の内容は既に盗聴されていた…。

「どう?フラビージョ」
「うん、よ~く聞こえる!録音もバッチリOK!」
 『オボロゲクラブ』のメンバーである野乃七海とフラビージョは調査先に盗聴器を仕掛けて録音していた。 彼女達二人はガス点検員を装い盗聴していたのであった。ちなみにどこに盗聴器を仕掛けたかというとその部屋の住人が持っているノートパソコンの外付け充電バッテリーである。二人はこの住人がとあるパソコンショップをよく利用する事を調査の初期に掴み、そこの店員になりすまし、彼がバッテリーを買いに来た時に盗聴器内蔵のバッテリーを購入させたのだった。無論その事を相手は知らない。
「…『スカートめくり』か…」
「?七海、何て言ったの?」
「鷹介の言っていた事よ。こんな事しても借金が増えるばかりなのに…」
「そ~んな事言ったってアタシ達弱み握られてるじゃん。おぼろさんも仕方なくやってるの知ってるじゃん」
「分かってるわよ、だから他のみんながクライアントの本当の目的を調べてるじゃない。秘密裏に」
「あ~あ、つまんない、つまんない。アイツらに『落ダ~イ!』って言ってやりたい」
「いいからちゃんと聞いてなさいよ。ばれるわよ」
「は~い、分かってるって」
 だが、彼女達の事は既に『スクラッチエージェンシー』によってばれていた。

「ちょっとそこの人」
 七海は不意に後ろから誰かに肩を叩かれた。
 振り向くと二人の女性が立っている。宇崎ランと真咲美樹である、二人はバエとなつめからサザンクロス病院での顛末を聞き、病院の周辺を調べていたのである。
「え、何か?」
「ここで何をしているの?」
「見てのとおり、ガス漏れの調査ですけど…」
「その割にはそこのお宅の調査するのが長いわねぇ。どういう事かしら?」
「いえ、実はまだ入ったばっかりで慣れてないものですから」
「いい加減にしなさい!貴方達、『オボロゲクラブ』のメンバーね!」
「!」
「貴方達の仲間が喋ったわよ。サザンクロス病院の人間を監視しろと依頼されたそうじゃないの」
「……」
「とにかく貴方達にも来てもらうわ。ついでにこの事をそこの住人にも喋ってもらうわよ」
「ヤバッ!いっち抜っけたー!」
 フラビージョが逃げ出そうとするが
「おっと、そうは問屋がおろさねえぜ!」
 と彼女の行く手を深見ゴウが塞ぐ。
「う~」
 こうして、七海達も捕まってしまった。その光景を地上で見ていた男がその場を去りながら呟く。
「ありゃあ、もうクラブはおしまいだな。チャッと報告しますか」

4

「ジャン、いつまで不貞腐れているのよ。悔しいけど仕方ないじゃない」
「んな事言ったって~」
 『スクラッチエージェンシー』の事務室内でジャンがふくれっ面をしている。
 せっかく盗聴器を仕掛けた犯人を捕まえたのに決定的証拠が無かったため警察に引き渡す事が出来なかったからである。
「チクショウ、ゾワを仕掛けた奴、結局逃がしたのと同じじゃないか」
 ジャンがブツブツ言っていると
「ジャンよ、おぬしの気持ちはよ~く分かる。じゃがの、例え引き渡したとしても奴らの言っていた黒幕が直接指示を出したという証拠がなければ逆にわしらが嘘を言ったという事で捕まってしまうんじゃ」
 とシャーフーが慰めながら犯人を引き渡せなかった理由を説明する。
(作者注 刑法第百七十二条:人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発、その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する)
「でも~美樹とランが捕まえた女達は明らかに盗聴してたじゃないか~。その前日にもゾワがちゃんと仕掛けられているかどうか変装して確かめに行ったって言うし~」
「そうじゃのう、しかしそれだけでは不十分なんじゃよ」
「それにしてもまいったぜ、せっかく捕まえても逃がす羽目になったばかりか一人が腰痛めてたもんだからそいつの治療代を払う羽目にもなっちまった」
「全くだよ兄さん。あの三条幸人という人、確かに腕は優れてたけど治療費を高く請求してきたからね」
「ったく、骨折り損のくたびれもうけだな」
 ゴウ・レツ・ケンがぼやく。
「社長、彼らが言っていたクライアントの目的とは一体何でしょうか?彼らでさえ分からないみたいですけど…」
 と美樹がシャーフーに尋ねると
「う~む、もしかすると理央が関わっている…」
「シロッコですか!?」
 レツが言う。
「そやつもそうじゃろうがおそらくリブゲートじゃろう。いや、あそこも関わっておるな」
「どこですか?」
 とレツが尋ねると
「『元斗会』という団体を知っておるかな?」
「はい、なつめちゃんが入院している病院を経営している…」
「そうじゃ、その団体がリブゲートと手を組んだ事も知っておろう」
「ええ、CP9製薬がリブゲートと提携しました」
「そうじゃ、今回の事も奴らの利害に関わっておろう。メレよ、理央にもこの事は伝えておくように。お前さんの口からなら伝えやすいじゃろう」
「分かりました、理央様に必ず伝えます」
 メレは理央の行く末に不安を見せた顔をしながらも凛とした声で言った。
 

「ほんま、すんまへん」
「やれやれ、こんな事でバレてしまうとは『オボロゲクラブ』の名が泣くよ」
 ここは新時代出版社の社長室。
 社長のオルバ・フロストが『オボロゲクラブ』の団長である日向おぼろを呼び出していた。社長室のソファーには同社編集長の三島正人が座り、土下座したおぼろを冷酷な目で見下している。
「呆れたものだ、よくそれで探偵を名乗れるものだな。貴様の師匠は相当なヘタレか人を見る目がないらしい」
 三島は冷酷な言葉をおぼろに浴びせる。おぼろは反論しようとしたが言葉を飲み込む、彼らに言ってもさらに叱責を浴びる事になるからだ。
「それにしてもやっかいな事をしてくれたもんだ。せっかく、クラブの借金を我々が肩代わりしているというのにこのザマだからね」
 オルバは椅子から立ち上がり、窓の外を眺めながら言う。『オボロゲクラブ』は設立当初から知名度が低く仕事の依頼が少なかった為に経営不振で借金を抱えていたのだ。それを肩代わりしたのがなんとリブゲートグループだったのである。
「……」
「いつまでそうやって黙っているつもりかね?そうやっているだけならサルと同じだな。いっそ、臓器を売ればいいじゃないかな?金にはなる」
「ま、まさか借金肩代わりを取り消すとでも…」
「フフフ、それはこれからの君達次第だよ。ああ、解散という手もあるね。ヘタレは所詮ヘタレだから」
「そ、そんな事は…」
 反論しようとしたおぼろに対し、
「だったらこれ以上の失態をやらかさないようにする事だな!貴様らのせいでこの私もトバッチリを受けたのだぞ!どうしてくれる!」
 と三島が罵声を浴びせる。
「三島君、やめたまえ。借金に関しては引き続き面倒は見る。しかし…」
「分かっております。もうヘマはいたしまへん」
「フッ、まあいい。新たな指示は後日言い渡す、帰りたまえ」
 おぼろは立ち上がり二人に会釈するとうなだれた格好で社長室を出た。
「社長、あんな奴らの面倒を見てどうするのですか、ただのお荷物じゃないですか」
「フッ三島君、あれはあれでいろいろ有利な情報を手に入れてきてくれるのだよ。彼らは十分役に立つ、それにあれは我々のおもちゃでもある。ストレス解消にはもってこいではないかね」
「…なるほど」
「さてと君には申し訳ないがしばらく編集長の役を解く。そうだな、広報部へ行ってもらおうか。なあに、しばらくの間だけだ。ほとぼりが冷め次第、復職させる」
「はい、ありがとうございます」
 三島はオルバに慇懃に礼を言う。オルバはまだ外を眺めていた。

「最悪や…わてらは最悪や」
 おぼろは目に涙を浮かべてトボトボと廊下を歩く。そこへ
「あの~、どうかしたんですか?」
 と尋ねた若者がいる。若くして株主長者になったキョンである。彼はたまたまこの会社に用事があって来ていたのだった。
「あ、あんさんは」
「随分、困ってらっしゃるようですがよかったら話してくれませんか。大した事はできませんけど…」
「……」
 彼女が黙っていると
「おやおや、こんな所におられたのですか。…この方は?」
 と一人の眼鏡をかけた男が来た。
「ああ、右京さん。どうもこの人酷い目にあったみたいなんだ。だから話だけでも聞こうと思って」
「そうですか、それはお困りでしょう。ここではなんですから外に出ましょう」
「そうだね、どこかいい所ないかな?」
「そうですね…あ、おでん屋なんてのはどうでしょうか。私の知り合いがやっているんですよ。そこなら気兼ねなくこの方が話せるでしょう」
「お任せします。さあ、貴方もこれで涙を拭いて一緒に来てください」
 キョンはポケットからハンカチを出し、おぼろに渡す。
「ホンマでっか、えろうすんまへん」
 おぼろはキョンの好意に甘える事にした。 しかし、おぼろもキョンもこの時は『右京』と呼ばれた男がリブゲートに潜入捜査している『ゴリラ』に所属する刑事、杉下右京である事には気付かなかった。

 その頃、『オボロゲクラブ』事務所では…
ボカッ!!
ドゴッ!!
「貴ッ様ーッ!!仲間をなんだと思ってやがるんだ!!」
「やめろ!!一鍬!!」
 霞一鍬が怒りのあまり同じメンバーのサタラクラを殴りつけていた。七海とフラビージョが捕まった時、サタラクラ(本名:桜宗吾)はこのクラブに見切りをつけて新時代出版社にこの事を告げたのだった。
「止めるな兄者!!こいつは仲間を売ったんだぞ!!許せねぇ!!」
「ヘッ、なーに言ってやがる!どうせこのクラブはおしまいなんだ。負け犬に見切りをつけてなーにが悪いんだ、えっ?」
「何だとこの野郎!!」
「よせと言ってるのが分からないのか一鍬!!殴るだけ無駄だ!!」
 一鍬の兄、一甲が悪態をついたサタラクラにまた殴りかかろうとした弟を止める。
「ヘヘッ、こんな所よりもなあ、金をたんまりくれる所なんかあるんだよ。へヘッ見ろ!!今回の失敗の報告でなあ、こーんなにたんまりとくれたんだぞ!どうだ!!」
とサタラクラは札束を見せる。
「お前という奴は…!」
と尾藤吼太は彼を睨みつける。
「悔しいか!?悔しいのか!?悔しかったらなあ、俺みたいにうまく稼いでみな!!こんな所にいても大した金は入らないだろうがな!!」
「サイテーね、アンタ!」
「落第だ!落ダーイ!!」
 ウェンディーヌもフラビージョも口を揃えて彼を非難する。マンマルバやサーガインは黙っていたがその目には怒りの表情が見て取れた。
「…失せろ!!」
 吼太が叫ぶ。
「あ?なんだって?」
「失せろ!!このクラブから出て行け!!」
「そうだ!出て行け!!」
「出て行け!!出て行け!!」
「ああ、そうかよ!!言われなくても出て行ってやるよ!!ここはなあ、もうおしまいなんだよ!!こんな所に誰がいるもんか!!ざまあみやがれ!!!ハーハハハハハハ!!」
 メンバーから非難の声を浴びたサタラクラは散々悪態をついて事務所を出て行った。そんな彼をまた殴りかかろうとした一鍬を一甲が止める。
「兄者!!」
「行かせてやれ!その方がせいせいする」
「全く何という奴だ!!仲間の失態を売ってまで金が欲しいとは!!」
「これじゃ、おぼろさんが悲しむわよ」
「全くだ!!そうじゃないか、鷹介」
 吼太はそれまで自分の席に座って沈んでいた鷹介に言う。
「…俺は…俺には何も言えない」
「鷹介、まだ自分を責めてるのかよ」
「そうだ、お前だけのせいではない」
 吼太とサーガインが鷹介を慰めるが彼の表情は変わらなかった。そんな光景を黙って見ていた無限斎は呟く。
「…哀れなもんじゃ、このクラブもあやつも…」
 

「…ええ、そうです。お願いします」
 その夜、サザンクロス病院長のシンは自分の携帯で誰かと話していた。話し終わると院長室の窓の外を眺めながら呟く。
「ビアス、いや元斗会め!俺を操るというなら俺にも考えがある。俺は貴様達の言いなりにはならんぞ、覚悟しろ!」

 編集者 あとがき
 わが盟友Neutralizerと苦労を重ねながら打ち込んできたのがこの真実の礎です。
 今回の盗聴騒ぎですが、実生活でもさまざまな形であります。しかも、盗聴までまかり通り販売される有様です。今回の作品で出てきた少年ですが、彼は後々に本編で出てくる予定です。今回は今まで出てきた作品を使ったため著作権者の明記は差し控えますが、著作権者への尊敬の念は忘れていないことをここに改めて表明いたします。
 今回新たに東京大学物語 (C)江川達也・小学館 を採用させていただきました。水野亜美の名前と東京大学物語のヒロインである水野遥の姓が同じと言うところに着目した結果です。概念に振り回されることなく、発想を広げていこうと思っています。また、福原一郎という人物は田原総一郎、斉藤一美(文化放送で過去人権無視のひどい放送をしでかした)、福澤朗、みのもんたの最悪の部分を集めこんで作ったキャラクターです。また、テリー和田なる人物は和田アキ子、テリー伊藤、北野武の合体したモデルと思っていただけると幸いです。

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