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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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1
 「ラオウ様、お薬の時間でございます」
 ここは壬生国にあるラオウの邸宅。人はこの邸宅の庭に大きな馬の銅像がある事からこの作品の名をとって『黒王邸』と呼んでいる。
「…」
 ラオウは無言で頷くと傍らにいる女性から水の入ったコップと抗癌剤を受け取り、薬を口に入れ水を流し込む。
「いつもすまぬ、トウよ」
「そんな…。ラオウ様…」
 『トウ』と呼ばれた女性は遠慮しがちに言う。彼女はあのリハクの娘である。ラオウに恋心を抱き、彼がスキルスにかかっている事を知るや、父のリハクが止めるのも聞かずに彼の元に身を寄せた。それからはラオウの愛人として彼の身の回りの世話をしている。
「フフフ…。十年前に北見という医師から、この命、もって一年と言われたが何とか生きてきたな。癌を宣告された時、俺はこう思った、『どうせ死ぬのだ、せめて天を掴んでやろう』とな。その為にこの国の防衛軍を掌握しようと兄者と共に色々画策し、その度に更木剣八や日番谷冬獅郎なる輩とぶつかってきた」
「……」
「だが…今、この国に喪黒福造とかいう者が来て支配しようとしている。それは止めねばなるまい。兄者もトキもそれに奔走しておる」
 ラオウの兄のカイオウは防衛省に勤めており、弟のトキは壬生国の正式国会議員である。二人とも喪黒の素性が掴めぬ為、その素性を掴もうとしている。時には拳志郎達にも情報を提供したりしている。
「トウよ…。悪い事は言わぬ、リハクの元に帰るがよい。俺の命は残り少ない、父の元で仲良く暮らせ」
「いやです、ラオウ様!トウは…トウは貴方様を一目見た時からずっとお慕いしてまいりました。今でも私は貴方様を愛しております。ラオウ様が死ぬその時までお傍に居とうございます」
 トウはラオウの手にすがり、目に涙を浮かべて言う。
「フフフ、そうか…。このラオウの傍に居たいか。ならば好きにするがよい」
 ラオウはトウに優しく笑みを向けて言うと窓の外を眺め、呟いた。
「荒れるな…、この国は…。俺に残された時間はないか…」
 
 
 話は変わって…。
 
「ダーッハッハッハッハッハ!」
とCP9製薬社長スパンダムは大声で笑う。ここは東京にある『サークルビル』35階にある中華料理店。同じ席にビアス教授、関東連合議員サウザー、同議員シャギア・フロスト、その弟で『新時代出版社』社長オルバ・フロスト、そして医療法人『元斗会』会長ジャコウが顔を揃えている。
「うるさいよ、スパンダム君。静かにしたまえ!」
とビアスがたしなめる。
「何言ってんですか教授。ここは貸し切りですぜ!何も心配はいりませんって!」
とスパンダムは気にしてない様子だ。
「フフフ…、相当儲かっているようだな」
とサウザー。
「ええ、お陰様で。ダッハッハッハ」
とスパンダムはまた笑う。そんな光景を見ながら残る三人は食事している。
「それにしても、目障りなのはブンヤ共です。私とスパンダム君の所に例の奴らが来て、鋭く突っ込んできます」
「ああ、例の『五車星出版社』だね」
 ビアスの言葉に反応するオルバ。
「僕も知っているよ、あそこの規模は小さいがかなり人気がある。僕にとっても少々目障りだ」
「『プリズム』の売れ行きを左右するほどかね?オルバ」
と弟に尋ねる兄のシャギア。
「今のところはそれほどでもないよ、兄さん。でも一部の知識人からは『新時代出版社の雑誌は低俗だ!』という声が上がってきているんだ」
「それは困った、貴方のお力を借りて奴らを封じようと思っていたのに」
と肩を落とすビアス。
「おいおい、ビアス教授。『エニエス』の安全性を声高に叫ぶ君らしくもない。そんなことでどうするのかね」
とそれまで黙っていたジャコウが言う。
「そこです、実は改めて『エニエス』の安全性を訴えるキャンペーンをやりたいのです。その為には…」
「我々の協力が必要というわけか」
と答えるサウザー。
「そうなんですよ、先生。そこをお願いしたくてこの会食へ出たわけでして」
とビアスは懇願する。
「分かった、何らかの手を打たねばなるまい。そうであろう?シャギア君」
「はい」
その時、
「失礼いたします。お連れ様がいらっしゃっております」
とウエイターが来て言った。
「連れ?呼んだ覚えがねえぞ」
と言うスパンダムに対し
「ああ、スパンダムさん、僕が呼んだのだよ。貴方の望みを叶えるためにね」
 オルバが言った。
「?」
「君、その方をここへ通してくれたまえ」
「かしこまりました」
 ウエイターは一度下がると、一人の金髪の若い男を連れてきた。
 
「スパンダムさん、こちらは通信大手企業『マードック』の社長をやってらっしゃる…」
「ロンと申します。お見知りおきを」
 オルバに紹介された男はスパンダムに会釈した。一方、オルバはウエイターに椅子の用意をさせ、彼を下がらせるとロンを席に着かせた。
「こ、これはどうも。オルバさん、この方と私の望みとどういう関係で?」
 スパンダムはロンに挨拶した後、オルバに尋ねる。
「それは私から説明致しましょう。スパンダムさん、貴方はリブゲートとの提携をお望みであるとか」
とロンは言う。
「あ、ああ、そうですけど…」
と答えるスパンダム。
「それは丁度いい、実は私とリブゲートの根岸専務とは昵懇の仲でしてねぇ。もしよろしければ私が貴方のCP9とリブゲートとの提携を仲介してもよろしいのですが」
「ほ、本当ですか?そりゃ!?」
「ええ、リブゲートが最近ゼーラの企業を二・三社買収しているのはご存知でしょう。そこへ御社が提携とくれば鬼に金棒です」
「ダーッハッハッハッハ!そりゃ願ったり叶ったりですよ!」
「ただ、その代わりある人物の後援をお願いしたいのですが」
「ああ、喪黒福造先生でしょう。勿論、資金面はバックアップしますぜ」
「それはよかった、ここへ来たかいがあったというものです」
「こっちもですぜ。よろしくお願いいたしますよ」
「ほほう、契約成立だな。めでたいではないか、スパンダム社長。どれ、ロン社長も一杯どうかね?リブゲートとCP9の提携を祝って乾杯といこうではないか」
 サウザーが紹興酒の瓶を持ち、ロンが差し出したグラスに酒を注ぐ。
「これは恐縮です。サウザー先生」
「何、構わんよ。では諸君!リブゲートとCP9の更なる発展を祝って乾杯!」
「乾杯!」
 七人はグラスを合わせた。
 
「ところでオルバさんから伺ったのですが、皆さん『五車星出版社』の記者に悩まされているとか」
「そうなんですよ、ロンさん。あの連中がうるさくってたまらないんですよ。特に我が社の『エニエス』の件で」
「私もです。『エニエス』の事についてひたすら追求してくる。他に原因があるのに。それでサウザー先生方にお願いしている次第でして」
「なるほど、実は喪黒先生の周辺にもあの会社の記者が嗅ぎ回っておりましてねぇ」
「となると、こりゃ奇遇だ。貴方と我々は共通の敵をもつわけだ」
「そういう事です。しかし、もし突然いなくなったとすれば…」
「?どういう事です?」
「フフフ、それはお楽しみという事で」
「何かコネがあるという事ですな?」
「まあ、そうですと言っておきましょう」
 その時ウエイターが料理を運んできた。
「失礼いたします。フカヒレの姿煮でございます」
「皆さん、これは皆さんへのお近づきの印です。どうぞお召し上がり下さい」
「ほう、これは旨そうだな」
とジャコウは言った。
 
「ああ、待ちたまえ、君」
とシャギアは去ろうとしたウエイターを呼び止める。そのウエイターは弁髪をしており、歳は10代後半らしい。
「見かけない顔だな。新人かね?」
「はい」
「名は何と言うのかね?」
「張五飛(チャン・ウーフェイ)と申します」
「そうか、いい名だ。せっかくだ、受け取りたまえ」
とシャギアは『五飛』と名乗ったウエイターに一万円札を渡した。
「ありがとうございます」
と五飛は深々と頭を下げて礼を言い、
「それではごゆるりと」
とサウザー達の席から去っていった。彼らの席から離れると五飛は呟く。
「フン、よく悪巧みをやるものだな、いずれバレるのに」
 
 
2
 
「そんなに不味かったのか、あそこの料亭」
「ああ、加賀美の舌もそれほどではないな」
「……」
 ここは川崎の商業施設中央にあるブルートレイン食堂車をそのまま使っているレストラン。先日『怪談亭』に試食しに行った天道総司と加賀美新・日下部ひよりの三人がこの商業施設を立て直したIT企業社長の神代剣や美容師の風間大介、このレストランのカフェテリア担当の池田英理子達と話している。
「あの~ひょっとしてあの『怪談亭』?」
 英理子が躊躇いながら天道に尋ねる。
「ああ、そうだがお前も行ったのか?あんな不味い料亭に」
「う、うん蒔人と。彼がデートに誘ってくれて東京に行ったのよ、その時」
「英理子さ~ん」
 丁度その時に小津蒔人が野菜を持って現れたので英理子は気まずい顔をした。
「野菜持って来たよ!…あれ?英理子さん、どうしたの?」
「蒔人、実は…」
「蒔人、お前『怪談亭』に行ったそうだな」
と天道が蒔人に尋ねる。
「え!?天道、お前も行ったのか!?あの最低な料亭に」
(あちゃ~)
 英理子はますます気まずくなる。
「英理子さん、何か気まずそうだけど何かあったの?」
 心配して風間のアシスタント役をしているゴン(百合子)が英理子の顔を見て尋ねる。
「そ…それが蒔人ったらそこの料理人と怒鳴り合いになっちゃったのよ。あまりの料理の不味さに」
「ほう、喧嘩か」
「ああ俺、料理のひどさについカッとなって厨房まで行って怒鳴ったんだ。『ここの料理はひどすぎるぞ!!』って。そしたら料理人の一人が…確か『伊橋』とか言ったかな、そいつが『おい、そりゃどういう事だ!聞き捨てならねぇ!!』と言い返してきたからますます頭に血がのぼって…」
「呆れるなぁ、僕としては」
「そこの番頭さんが止めに入ってようやく収まったのよ。それから女将さんが謝罪してくれたから蒔人もようやく落ち着いてくれたんだけど…」
「フッ、お婆ちゃんが言っていた、『未熟な果物は酸っぱい、未熟な者ほど喧嘩をする』ってな。その料理人は所詮その程度だったって事だ」
「天道、いい事言う」
「さて、仕込みに入るか。お婆ちゃんはこうも言っていた、『本当の名店は看板さえ出していないって』な。ここは看板さえない、すなわち、名店だからだ。この俺がいるからな」
「また出た、自我自賛…」
 天道以外の人間全員が呆れた顔をした。
 
 
 東京のとあるビルの一室…。
「えっ!?理央が?」
「なんてこった、よりによってあのシロッコのな…」
 ここはスクラッチエージェンシー。社員の深見ゴウ・レツの兄弟が社長のシャーフーと話している。
「社長は止めなかったのですか?」
「仕方ないじゃろ、本人もやると言ったのじゃから」
「しかし…」
「レツ、もうやめなさい」
 社長秘書の真咲美希が言う。そこへ
「ただいまー」
と漢堂ジャンが陽気な顔をして帰ってきた。
「おかえり、ジャン」
 笑顔で迎える宇崎ラン。
「ネコ~、見てくれよ、こんなにゾワがたくさん」
と盗聴噐を見せるジャン。彼は野生児だったせいか勘が鋭く、盗聴噐を探知機なしで見つけてしまうのだ。ちなみにシャーフーは顔が猫に似ている事から『猫社長』というあだ名を持つ。
「ジャン!社長とちゃんと言えないの!?」
と嗜めるラン。
「随分多いな。何件ぐらい見つけた?」
 レツが尋ねる。
「う~んと…」
「今日だけで50件」
と久津ケンがジャンに代わって答える。ケンはジャンと組んで盗聴噐探しをしているがジャンがほとんど見つけてしまう為、彼はサボっている事が多い。
「そんなに出回っているのか!まいったぜ…」
「無理もないじゃろ、法律で禁止されているわけじゃない」
「なぁ、どうして禁止しないんだ?」
「う~む、情報を一手に握れば利益なぞ思いのままじゃ、逆に防犯にも使えるのが理由じゃろ」
 ジャンの問いに答えるシャーフー。
「社長、盗聴噐はともかくとして問題は…」
「理央じゃな」
「なぁ、理央がどうかしたのか?」
「彼、あのシロッコのエージェントになったのよ」
「シロッコ~?」
「パプテマス・シロッコ、喪黒福造の秘書だよ。何か野望がありそうだ」
「ふ~ん、だったら回収したこれで…」
「ケン!!」
 ケンの言おうとした事が分かったのかランが大声で制す。
「とにかくじゃ、今はシロッコと彼についた理央の行く方向を見定めるのが今後の我々がやるべき事じゃろ」
「ネコ、ゾワは?」
「勿論、回収し続けるのじゃ」
 
 
『…従いまして、今流行っておりますC型肝炎につきましては現在調査中であり、CP9製薬の『エニエス』との因果関係は全くないと断言いたします』
「ケッ!何言ってやがる、あれほど取り沙汰されてるのにまだ意地張ってるのかよ!」
 ここは東京にある日本連合検察庁。検事の久利生公平はテレビでやっていたビアス教授の記者会見に顔をしかめてチャンネルを変えた。
「ホント、意地張ってますねぇ。街頭でもデモをやっているというのに」
 事務官の雨宮舞子も頷きながら言う。二人は性格が相反してはいるがコンビネーションは抜群で色々な事件を鋭く捜査している。
「そもそもさぁ、何で出版社が企画するわけ!?こいつにも擁護する事書いてあるじゃん!」
 久利生は傍らに置いてあった雑誌『プリズム』のページを開いて雨宮に見せる。そこには『ビアス教授、薬害疑惑を断固否定!!全てマスコミのでっち上げ!!』というタイトルで記事が書いてあった。
「ホントだ、同じような事が書いてある」
「しかもだ、今朝議会から『調査を終了しろ』と言ってきやがる」
「確かサウザーって人でしたね、言ってきたのは。彼は『元斗会』のメンバーでもある…」
「ああ、奴は絡んでる。その上、あのCP9だっけ?あの会社は創立当時から他社に負債押し付けて乗っ取ったって話があるからな。つながっているのは間違いなしだな」
「先日のニュースでも高畑魔美さんって方が言ってましたっけ、『私の夫はCP9のいい加減な血液製剤によって肝炎にかかってしまいました。それにもかかわらず、当社と塔和大のビアス教授は未だに安全だと主張してますがこれほどまでに被害が広がっているのはどういう事でしょうか』って」
「そういう事!こうなりゃあ、とことん調べまくるだけだ」
「ちょっと待って下さい!調査終了の命令が出てるんですよ」
「んな事知るか!行くぞ!」
「え?どこにですか?」
「決まってるだろ、ここだよ」
と久利生は机に置いてあった雑誌『週刊北斗』を開いて、雨宮に見せた。
「『喪黒福造、凉宮ハルヒ・リブゲート専務根岸氏と密談!!背後にサウザー連合議会議員も絡む?』。これが何か?」
「分からない?『五車星出版社』だよ。行く所は」
 
 
 その頃、その『五車星出版社』の一室で一人の男が電話で話していた。彼の名はシュウ、この会社の社長である。目は10年前のテロで負傷し、見えなくなっているが経営力は抜群だ。
「えっ!?来日されるのですか?やはり気になりますか、壬生国の事が…。分かりました、お待ちしております」
 果たして、誰と電話で話しているのだろうか?
 
3
 
「なんとまあ、娘まで連れてきてやがる」
 ここはリブゲートのビルからちょっと離れたデパートの屋上。リンとバットは双眼鏡でリブゲートのビルを見張っていた。
「あの男、娘を連れてきてどうするつもりかしら?」
「決まってるだろ、よく言う『帝王学』って奴さ。ん?後ろにいる男は奴の秘書か?」
 バットが見た男は薄紫色の髪をした男だった。何か静かな顔立ちがバットに嫌な感情を抱かせた。
「…!!バット、あれ!」
 リンが指差す方向にバットが双眼鏡を下に向けると一人の車椅子に乗った少女が五・六人のSPに囲まれて、車に乗るところだった。
「随分物々しいなぁ、何かあったのか?」
「ねぇバット、あの少女見た事ない?」
「?」
「あの子、確かルルーシュって議員の妹よ」
「え!確か名前は…」
「ナナリー、ナナリー・ランペルージ。それにしても一体何故あんなに物々しいのかしら?もしかして…」
「ははーん、確か彼女が出てきたビルはリブゲートビルの隣だったな。何かを見て危険を感じたな」
「バット、彼女に当たって話を訊くというのはどう?」
「そうだな、何か掴めるかもしれん。行こう!リン!」
 二人はデパートの一階まで降りると外に出た。
 
「あの子、どこに行くのかしら?」
「多分、兄貴の所だろう。あのSPはルルーシュが寄越したとみて間違いないな」
 二人がタクシーを拾おうとした時、
「よっ!お二人さん」
と気軽に声を掛けた若者がバイクに乗って現れた。
 
「ジュドー!!」
 二人は同時に声をあげた。『ジュドー』と呼ばれた若者はヘルメットのバイザーを上げる。
「何してんの?仕事?」
「当たり前だ!買物してるように見えるか?」
「ハハハ、で何か追ってるようだけど」
「まあな、リブゲート知ってるだろう。奴らの悪行を暴きにさ」
「なるほどねぇ。ところで今行ってきたビルで何か物々しい事になってたけど何か関係あるの?」
「何!?お前、あそこのビルでの事見てたのか?」
「ああ、届け物があったからね」
 ジュドー・アーシタは運送会社『ゴッドフェニックス運送』で配達員として働いているのだ。ちなみに彼にはリィナという妹がいるが彼女もそこの受付で働いている。
「おい、その事詳しく話してくれんか」
「ああ、いいぜ。おっ!丁度昼だな。どっかで飯食おうぜ」
「バイクはどうすんだよ?」
「なあに、サッと止めてくるさ」
「まさか路上に止めるんじゃないだろうな。駐車違反になっても知らんぞ」
「心配性だなぁ」
「あのなあ!お前の事でケンが手を焼いてるのを忘れるなよ!」
「はいはい、分かってますって。それじゃバイク置いてくるから」
とジュドーは走り去っていった。彼は不良まがいの悪さをしていて、妹のリィナに心配ばかりかけさせた。たまたま拳志郎がある事件を取材していた時、リィナから相談を受け、彼を捕まえ更生させて今の職を紹介したのだった。二人ともその事は拳志郎から聞いて知っている。
「ったく、世話のかかる奴だな」
 バットがそう言うとリンはクスクス笑った。
 
 
「冗談じゃないわよ!!何でこうなるのよ!!?」
 凉宮ハルヒは『週刊北斗』の最新号を見るなり、激怒して床に叩きつけた。そこには先日、喪黒と密談していた事が書いてあったからだ。彼女は携帯電話を出し、掛ける。
「もしもし、一体どういう事なのよこれ!?密談の事がバレちゃってるじゃない!!」
『ええ凉宮さん、ですから私もどうするか根岸専務と相談中でしてねぇ』
「オーブにまで影響力あるのよ、この雑誌!最悪の場合、貴方の失脚だけじゃ済まないわよ!!分かってるんでしょうね!?」
『ホーッホッホッホ、ご心配なく。こちらには『新時代出版社』がいます。なあに、反論記事を頼んでますから。それにいざとなれば名誉毀損罪で『五車星出版社』を訴えればよろしいでしょう』
「そう、その名誉毀損罪での訴えが通ればいいけどね。何にしてもこの事をうまくかわさないとオーブにやられるわよ。私もサウザーさんに頼んでみるからうまくやってみて」
『勿論ですとも、ホーッホッホッホ…』
 
「さてと」
 ハルヒはサウザーに会う事にした。密談が露見した以上、何らかの対策を打ち出さなければならない。
(それにしても何故今回の密談がバレたのかしら?…まさかスパイ?その事もサウザーさんに話さなくっちゃ!)
 言い遅れたが彼女がいるのは議員会館である。彼女は自分の部屋を出て、サウザーの部屋へ早足で歩いていく。それを廊下の角で見ていたオレンジ色の髪の少女がいた。彼女はハルヒの部屋に入り、床に叩きつけられた『週刊北斗』を拾い上げ、読む。それからまた床に置いて元に戻すと外に出て携帯電話を掛けた。
「もしもし私、シャーリーだけど…」
 
「えっ、ハルヒが!?」
 親友であるシャーリー・フェネットから電話を受けた紅月カレンは驚いた。彼女とシャーリー、ハルヒの三人は学友であった。アクの強い性格のハルヒにはカレンもシャーリーも辟易していたがそれでも親しくしていただけにハルヒの行動を黙って見過ごすわけにはいかない。
「困った子ね、といっても素直に私達の言う事を聴かないし…」
『そうよね、ルル(ルルーシュ)はこの事知ってるの?』
「実は彼の妹のナナリーが喪黒とリブゲートの根岸専務との密談の様子を見てたのよ。さっき彼に連絡して妹を帰したから知る事になるわ」
『そう、ならいいけど…。あ、『週刊北斗』の最新号見た?』
「ええ、勿論よ。それも見せましょう。いずれにせよ、あの子の暴走を止めないと関東連合がメチャクチャになるわ。私が彼女に一言釘を刺してみる」
『お願い、そうして。ハルヒに直接言えるのは貴方だけだから』
 
 
「そうか…。フム、困った事になったな」
 ここはサウザーの部屋。ハルヒから話を聞いたサウザーは腕を組んだ。
「サウザー先生のお手を煩わして申し訳ありません。まさかバレていたとは…」
「まあいい、この国に対する君の愛国心は私も素晴らしいと思っている。色々な方面に圧力をかけてみよう。必要とあらばバロン影山氏の力を借りる事になるが」
 バロン影山は関東連合議会の副議長である。ちなみに議長の名はギレン・ザビといい、独裁的傾向が強い。
「お願いします、私はこの関東連合を何としても守りたいのです。今にもこうしている内にオーブは…」
「そうだな、壬生国がオーブ寄りになるのは私としても見過ごすわけにはいかん。安心したまえ、私は君の味方だ」
「ありがとうございます!そう言っていただけると助かります」
「後は任せてくれたまえ」
「はいっ!では失礼します」
 ハルヒが部屋を出るとサウザーは内線を掛ける、相手はバロン影山だ。
「私です…。ええ今彼女が私に縋りついてきました。クックック、愛国心旺盛な人間ほど操りやすいですな、彼女にはピエロの役をこのまま続けてもらいましょうか。我々の為にも…」
 
 
「く、薬を…黄色い馬をくれぇ…」
 一人のミュージシャンらしき男が路地裏で麻薬の密売人にすがりつく。
「おやおや、また貴方ですか。金は持ってきてるのでしょうね?」
「ああ、持って来たからくれぇ…」
 男は金を密売人に渡し麻薬を受け取る。この男がまさか塔和大学の学長選考会に波紋を呼ぶなど誰も思いもしなかった…。
 
 
編集者あとがき:
 皆さんご存知かと思いますが、密室政治はどの時代にも尽きないものです。
 山田洋行事件しかり、様々な古今東西の不正は絶えることなく続いているのですが、ジャーナリズムはそうしたものを監視する第五の権力として位置づけられているのにもかかわらず日本は権力者の奉仕に終始しているのです。愛国心が叫ばれた戦争時代、時の軍事政権はその名のもとに圧力をかけて国民を一体化しようとしましたがそれがいかに政権にとって都合がよかったのかはご存知でしょう。
 愛国心は悪党の最後の隠れ家というのはこのことを指すのです。次回は大学の学長選考会に嵐が巻き起こります。お楽しみに!

著作権者 明示
『ゴッドハンド輝』 (C)山本航暉・画、構成・監修:天碕莞爾、講談社 2000-2011
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』 (C)原作 八手三郎、脚本 横手美智子 他 テレビ朝日・東映・東映AG 2007-2008
『新機動戦記ガンダムW』 (C)創通、サンライズ 1995
『コードギアス 反逆のルルーシュ』 (C)原作 ストーリー原案:大河内一楼、谷口悟朗 SUNRISE/PROJECT GEASS・MBS、Character Design CLAMP 2006
『電脳警察サイバーコップ』 (C)東宝 1988-1989
『機動戦士ガンダムΖΖ』 (C)創通・サンライズ 1886-1887
『機動戦士Ζガンダム』 (C)創通・サンライズ  1985 - 1986
HERO (C) フジテレビ 脚本 福田靖、大竹研、秦建日子、田辺満
『BLEACH』 (C)久保帯人・集英社 2001-
『笑ゥせえるすまん』:(C)藤子不二雄A  中央公論社  1990
 
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