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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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 読者の皆様へ
 アメブロの記事の再編成に伴い、過去の作品を再掲載させて頂きます。

派遣国会議員外伝『真実の礎』第一話(Neutralizer)

1
 
 喪黒福造がリブゲートを使って壬生国に進出しようとしていた頃…
 その男は成田空港に着いたばかりだった。男の年齢は30代後半といったところか、体つきは格闘技をやっていたせいか筋肉が隆々とついている。
 「到着便のお知らせです。ヘルシンキ発19:00着フィンランド航空73便は…」
 空港内に旅客機発着案内のアナウンスが流れる。男は手続きを済ませ出入口に向かう。出入口近くの柱の一つにグラビアアイドルの小津芳香のポスターが貼られこう書いてあった。
 『麻薬は使ったら人生終わりだよ、絶対ダメ!!』
 それをチラと見て男は外へ向かう。

 男が向かった先は横浜にあるとある教会の墓地だった。手にはバラの花束を持っている。近くの花屋で買い求めたものだ。海が見える一角にある墓の一つまで来るとその墓の前に花束を置き、こうつぶやく。
「…ユリア」
 遠くから「ボオーッ」と船の汽笛の音がした。
 
 次に男が向かった先は東京にある小さな出版社だった。看板には『(株)五車星出版社』と書かれている。
 発行部数は大手出版社ほどではない。しかしここで出版されている『週刊北斗』は今まで数々の事件や不正などを冷静に取り上げていることから一般人や一部の知識人には人気があるのだ。
 
「ケン!」
 社内の事務室で男の顔を見るなり一組の男女が歩み寄ってくる。二人とも20代前半である。
「リン・・・バット!」
 ケンと呼ばれた男は思わず微笑む、この男こそ数々の政治家や企業の不正を暴き、後に『真実の礎を築いた男』と言われた霞拳志郎である。


2
「ケン、どうだった?福岡での調査は?」
 バットが尋ねる、拳志郎は三日前から福岡である疑惑について調査していてその被害者の一人に会ってきたのだ。
「高畑夫妻の事か…。やはり、あの血液製材で夫が肝炎を起こしたそうだ。入院先もあの病院だ」
「サザンクロス病院か、くそっ!いまだにCP9製薬のやつを使っているのか!」
 バットが言うサザンクロス病院は塔和大学付属の病院であり、最新設備がかなり充実している大病院であるが一方でゼーラにあるCP9製薬から賄賂をもらっているなどの黒い噂が絶えない。特に血液製材『エニエス』は加熱処理されていないという疑惑がある。しかもCP9製薬にはリブゲートと提携しようとする動きがあるという話もあるくらいだ。
「リン、喪黒という男の事についてはどうなっている?」
「う~ん、まだ調査中、というより壬生国出身ということ以外つかめてないのよ。とらえどころがないというか…」
「拳志郎君」
「編集長!」
 拳志郎が振り返ると60代の男が立っている。名はリハク、『五車星出版社』の編集長である。物腰は低く、社内から慕われいる一方、社会正義を貫く一面もあり拳志郎を高く評価しているのだ。
「どうだね、福岡での成果は?」
「はい、彼らにも言いましたが高畑氏は半年前に胃癌の手術を受けた際に『エニエス』を投与され、その後C型肝炎を発症しております。福岡の病院で診てもらったところ、やはりあの『エニエス』が原因ではないかと言われたそうです」
「ふむ…」
「しかし、それが原因だという決定的な証拠が無いのでサザンクロスとCP9の不正のつながりを示すには」
「ふむ、弱いか…」
 リハクは右手を顎にやり、考える顔だ。
「ケン、あのビアスが鍵じゃないのか?」
「あの男か…」
 ビアスは塔和大学医学部の教授であり、『エニエス』の安全性を声高に主張している人物である。
「…もう一度あたってみるか…。編集長、俺は塔和大へ行ってみます」
「分かった、無駄かもしれぬが何か新しい情報が掴めるかもな」
「はい」
「だが拳志郎君、釈迦に説法かもしれぬが権力を持った者は手強いよ」
「はい、重々承知です」
「それに拳志郎君、シンは…」
「編集長、やめましょう、その話は」
 拳志郎は遮る。シンはサザンクロス病院の院長であり、拳志郎とは親しい間柄であったのだ。
「ケン、俺は引き続き喪黒の方を探ってみる」
「私も」
 リンとバットは取材道具を持って事務室を出る。二人は幼い頃から拳志郎に可愛がられ、彼の影響を受けてジャーナリストになったのだ。ちなみに二人は結婚したばかりであり、結婚の仲人をしたのも拳志郎だった。
「二人とも無茶するなよ」
 リハクが声を掛ける。
「分かってますって」
 バットが笑顔で答える、しかしその顔に曇ったところがあるのを拳志郎は見逃さなかった。
 
 
 同じ頃、サザンクロス病院では…
 
「院長、ロブ・ルッチ常務がお見えです」
「…通せ」
 鋭い目をした男が部屋に入り、シンを見据える。それともう一人…。
「会長、貴方もいらっしゃってたとは」
 戸惑いを見せるシン。会長と呼ばれた男は顔からしてずるがしこそうな相である。
「シン、どうだ?経営は?」
「おかげさまで順調です」
「そうか、フフフ…」
「しかし、例の『エニエス』の件でブンヤが…」
「フン、ほっとけ。こっちにはビアス教授のお墨付きがある」
「そうですよ、院長。『エニエス』の安全性は保障されています。第一、肝炎にしても感染ルートはいっぱいありますしね。それに万が一のことがあっても我が社のスパンダム社長が手を打っています」
 ロブ・ルッチもニヤリと笑う。シンは黙りこくる。
「いずれにせよ、あのヴァルハラをしのぐ事ができればこの病院の株は上がる」
「そうですな、ジャコウ会長」
 二人は笑う。ジャコウは財団法人『元斗会』の会長であり、前任のファルコを狡猾なる手段で追い落として今の地位を掴んだ。ちなみに何人かの政治家もこの会のメンバーである。
 二人が笑っているのをシンは複雑な心境で見ていた…。
 
 

3
「そんな…」
 サザンクロス病院近くのアパートの一室で、パソコンを使いインターネットを見ていたサザンクロス研修医、水野亜美は絶句した。
 無理もない。病院で使われていた血液製剤『エニエス』によってC型肝炎が蔓延しているというニュースを見ていたからである。しかもそこには詳細な情報があるだけでなく、今まで『エニエス』を投与された患者が憤っている文章まで書かれていた。
(まさか…。あれは安全面は保障されているって先輩達が言っていたのに…)
 亜美の顔から血の気が引いていく…。
(どうしよう…。誰かに話そうかしら?でも…)
 亜美は迷っている。下手をすれば…。元々医者に憧れて塔和大学医学部に入ったのだ。それなのに…、自分の勤めている病院の黒い噂を彼女も知っていた。

 同病院外科医、伝通院洸もまた『エニエス』の事で悩んでいた。半年前に高畑和夫という男性を手術した際に使っていて、彼がC型肝炎にかかり、妻の魔美が病院に抗議してきたのだ。洸はその時も手術で彼女には会わなかったが後でその事を聞き、愕然としたのだった。
 (何て事だ!安全だと言われてた物で症状が出るとは…。ならば早めに『エニエス』の代わりを使わなければならないのに…。このまま、あれを使い続ければ「しまった!」となってからでは遅い)
 彼は廊下を歩きながら悩み続ける。
「…先生」
 一人の女性看護師が彼に呼びかける。
「先生!!」
 二度目の声に彼は掛けられた方向を振り向く。
「なんだ、魚住君か」
「『魚住君か』ではありません。先生、深刻な顔をしてますよ。何かあったのですか?」
 看護師の魚住愛が心配そうな顔で尋ねる。
「うむ…」
 洸は答えようとするが言いよどむ。病院の黒い噂は彼も知っていたのだ。
「もしかしてあの件…」
「魚住君!」
 洸は愛を制す。
「あの…、伝通院先生」
 二人が振り向くと研修医の亜美が立っていた。
「水野…君?」
 洸が亜美に何か問おうとした時、
『伝通院先生、伝通院先生、至急手術室までお越しください』
 と呼び出しのアナウンスが流れる。
「水野君、話は後で聞こう」
 洸は更衣室へ向かう。
「水野先生、話なら私が聞きますけど…」
「ありがとう、でもいいの。ごめんなさい」
 亜美は愛の好意に礼を言いながらも胸の内を明かせなかった。
 
 
 次の日は土曜日だった。亜美は非番なので中学時代からの友達と会う約束をしていた。ちなみに病院は下総国船橋にある。亜美は電車で麻布十番へ出かける。彼女は麻布十番の出身なのだ。
 
「ねぇ亜美ちゃん、何か顔色悪いよ?」
「そうよ、亜美はおとなしいからあまり喋らないけど今日はおかしいわよ」
 ここはとあるレストラン。親友の地場うさぎ(旧姓:月野)と火野レイが心配する、木野まことも沈んでいる亜美の顔を覗く。
「ご、ごめんなさい、ここのところ忙しかったから…。アハハハ…」
 亜美は笑ってその場を取り繕う。
「亜美、あの病院、やめたほうがいいわよ。あそこの噂、私達も知っているんだから」
 レイが言うと他の二人もうなずく。
「ありがとう。でも…、あそこにいるのは四年間だから」
「あ、そうだった。亜美ちゃん塔和大だったっけ。忘れてた」
 うさぎが笑顔で言う。
「…にしてもヴァルハラの方がまだましよね」
「そうそう、あそこの医者はかなり優秀よ…。あ、亜美何も貴方のところの悪口を言ってるわけじゃないから」
 亜美は友達に色々言われながらも例の事を考えていた。
 
 その一方、亜美の席の背中越しの席で食事している顔の一部が青黒い男と小さな女の子がいる。
「ちぇんちぇ~、聞いた?うちろの人達のはなち」
「ピノコ、いいから食べなさい。俺達には関係ない話だから」
 
編集者 あとがき
 この作品は『Break the Wall』シリーズに影響された我が盟友が立ち上げた外伝です。
 薬害問題、医療問題など様々な問題をこの作品は取り上げており、それらを表現することの困難さを乗り越えようとしています。
 なお、アメブロにあった原本は削除しています。ご了承下さい。

 
著作権者 明示
『北斗の拳』・『蒼天の拳』 (C)原作:武論尊、作画:原哲夫 NSP
『ONE PIECE』 (C)尾田栄一郎・集英社
『超星神グランセイザー』 (C)東宝 2003-2004
『ブラック・ジャック』 (C)手塚治虫
『美少女戦士セーラームーン』 (C)武内直子・講談社
『エスパー魔美』 (C)原作:藤子・F・不二雄
『魔法戦隊マジレンジャー』 (C)東映・東映エージェンシー・テレビ朝日
 

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