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現代社会をシミュレーションした小説を書いております。
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                                                          1
 
 川越の松坂征四郎邸では…。
「うーむ…」
 険しい表情で征四郎は資料を眺めていた。目の前にいるのは山岡士郎だ。 
「あんたの推理が当たってしまったな」 
「ああ、お前さんの言うとおりだ。剣星を近寄らせなくて正解だった」 
「しかし、あんたも親父顔負けの人脈を持っているな」 
「お前さん達ほどではないわ」
 憎まれ口を叩く士郎に苦笑する征四郎。 
「俺は今から東京の事務所に向かう、ついでにあんたの資料をヒロに届けようか」
「いや、ワシも行こう。欅君をここに呼ぶことにしよう。ロザリー君、欅君を呼び給え」 
「はい」
 金髪の美女がきびきびと動く。
 
 「はいはい、楽譜が来たんですか!?そりゃありがたい、明日放課後に取りに行きます」
 剣星は電話を受けていた。最近できた『紅楽器』という楽器専門店である。28歳の店長である紅渡はヴァイオリン職人で、剣星が最近ヴァイオリンを学び始めた際に教師として教えている。
 「先生、俺は先生を信じていますからね。俺もあなたの父君の思いである『人の音楽を守りたい』という気持ちは強いんですから。最高のヴァイオリン、一緒に見つけましょうよ」 
「ああ…。静香にもよく言われるよ。それに君と話していると君はヨーロッパに詳しいからちっとも飽きないよ」
 渡が渋い表情で話す、彼の妻である静香(22歳)は彼の第一の弟子であり、剣星のヴァイオリニストとしての腕も認めた存在だ。父・音也の名器『ブラッディ・ローズ』を超えるバイオリンを作る事が渡の夢で、そのために努力を積み重ねていた。そんな彼にしっかりモノを言う性格が静香で、バランスがしっかり保たれていた。正夫という赤ちゃんがつい2ヶ月前に生まれている。 
「ということで、明日学校の帰りに寄ります」 
「ああ、待っているよ。ついでにヨナちゃんも連れて来なよ」
 電話を切った後に征四郎が入ってきた。 
「じいちゃん、何があったんだ」 
「今から用事ができた、東京に行かねばならなくなった」 
「分かった、夕食は自分で作るよ」  

「というわけで、じいちゃんは東京に行って帰ってこないんだ」 
「そうか…。ワイも嫌な予感がすんで」
 バンド担当の店員である襟立健吾(えりたて けんご)が剣星と話す。彼は剣星と違い東京出身なのに素の自分を隠す為に関西弁を身につけた。剣星は険しい表情を崩さない。 
「剣星のお好み焼き、食べてみたいな」 
「今度じいちゃんと一緒に材料を集めるから待っててくださいね」 
「俺達は分かっているさ、な、渡」 
「ああ、兄さんの言うとおりだね」
 普段はセラミックキャピタルのベンチャーキャピタル部門で化学部門を担当する切れ者、登太牙(のぼり たいが)がにこっと現れる。実は渡と異父兄弟であり、仲がいい。その仲の深さは思いを寄せていた鈴木深央との恋のキューピットを渡夫妻が引き受けたからだった。人見知りのひどかった深央はそのおかげで太牙と結ばれた。 
「ハヤタ自動車か…。危険な相手だぞ、人間を人間とは思わない酷い経営ばかりしている」 
「共存共栄を掲げる登さんも嫌な相手ですか」 
「ああ、あのルーザーは自らを王様と思いこんでいる。何でもかんでも金で買えると思いこんでは話にならない」   彼の父親は太平航空墜落事故で命を落とし、母親の真夜が紅音也に嫁いだ為に兄弟になったのだが、登家はセレブだった為真夜は敢えて太牙については登家の籍にしたのであった。そうすることで世継ぎの問題は解決されたのだった。そのことを知っていた為彼は紅家にも支援を欠かさなかった。 
「もし、ルーザーが動いたら私達も戦います。大丈夫です」 
「真夜さん、あなたは…」 
「私は主人と一緒に世界一のヴァイオリンを作り、今渡がその道を歩んでいます。ルーザーは情熱を汚す卑劣な人でしょう」
 毅然とした口調で真夜が話す。 
「ゴメンね、遅くなっちゃった」
 そこへ店に入ってきたのはヨナ、ノエル。剣星は思わず驚いた、ヨナにはハヤタ自動車の悪事を話しているが、ノエルには話していないのになぜいるのか。 
「一体どうなって!?」 
「ゴメンね、話は里奈ちゃんから聞いたのよ」 
「それはあなたにとって大きなリスクよ!」
 思わず真夜が声を上げる。だが、ノエルはおれない。 
「ハヤタが過ちを犯したのなら、償うべきでしょ。それを認めないなんておかしいわ」 
「いいのか…、俺はもちろん、じいちゃんも死ぬかもしれないんだ」 
「だからこそよ。ヨナから詳しい話を聞いたわ、絶対に戦わなくちゃ…」 
「分かったわ…、あなたの覚悟、受け止めたわ」
 鋭い目つきで頷くのはモデルでもあり、GIN工作員の一人である麻生恵だ。婚約者である名護啓介がGINに配属されている関係もあり協力している。彼の父親が広志の選挙区で以前下院議員をしていたが自身の不正が発覚し、啓介の薦めで高野広志を後継者にして引退した。今、父親は啓介の戦いを側面からサポートしているのだ。 
「分かった、我々の仲間として受け入れるよう俺からも働きかけよう、その代わり命は大切にしなさい」 
「あくまでも我々の会合で決めることだ、いいね」
 隣の喫茶店『カフェ・マル・ダムール』のオーナーである木戸明が頷く。嶋護(CGIN初代CEO・嶋昇の親類)に普段は店を任せており、世界中のコーヒー豆の栽培に力を入れている。 
「しかし、君達が我々の運動に関わるとは…」 
「あなた達にとってゆりさんが大切な仲間だったように、俺達にとって里奈の肉親があんな形で失われるのは許せないんです…」
 剣星の目つきに怒りがこもる。 麻生ゆりは恵の母親で、ハヤタ自動車の欠陥自動車の暴走に巻き込まれて2年前に死んだ。それから紅一家を中心に『ハヤタ自動車に素晴らしき青空を取り戻す会』というNGOを結成して裁判を起こし始めたのだった。 
「そうそう、アクセスエンタテインメントのクラシックから支援金が届きましたよ」 
「へぇ、社長も粋な事してくれるジャン、キバっていこうぜ!」
 アクセスエンタテインメントに渡の父である天才バイオリニストの紅音也が所属している為、アクセスエンタテインメントもハヤタ自動車の問題に取り組んでいた。青いトレーナーをまとったワイルドな男が入ってくる。 
「オーナー、お前さん久々じゃないか」 
「次郎、久しぶりだな。俺は忙しいがな」 
「ねえねえ、今度のデザート何を入れるの?」
 渋い表情の木戸にすり寄る20歳のあどけない少年ににた青年。燕尾服をまとった大男が入ってくる。 
「ラモン、落ち着いてくれ。おいしいケーキは考えるよ」 
「おいしければ俺には文句がない」 
「リキ、そうだな。甘玉堂で勉強してしっかりやるか」
 リキといわれた大男、実は糸矢僚という本名があるがその風貌から力持ちのリキと言われるようになった。ラモン(獅子座生まれ)に至っては面白いことばかり追いかける為、その特徴をしっかり木戸は把握していいことばかりさせてきた。  

「ビショップ様、大変です!」 
「マリン、どうした!?」 
「ルーザー社長に松坂征四郎がくってかかってきました!」 
「何!?あの男、くってかかると言うことは証拠を全て集めたと言うことか…!!」
 黒いロングコートを着用する長身で眼鏡の男が驚きを隠せない。そこへ電話がかかってくる。 
「もしもし、ボス、私です…。何ですと、GINまでもが動いているですって!?あのNGOのスポンサー二人を取り込もうとしたのが失敗だったじゃないですか!?…、それは我々に死ねというのと同じですよ…。分かりました…」
 ため息をつくとビショップは金髪の美女、マリンにぼやいた。 
「だからハヤタはアホなんだ…」 
「仕方がないでしょ、私達に金払ってるんだから」

 そう、松坂はあの後…。 
「久々だな、桑田君」 
「松坂先生にロザリーさん」 
「相変わらず鋭い目つきね」
 ロザリー・ヘイルに福助は微笑んだ。絵里ですらも「美しくて完璧な美の女神」と絶賛するほど金髪で背が高くスタイルも抜群だ。政界の政治家からは求婚されているが松坂への忠誠心が非常に強いロザリーは断っていた。 
「高野君、あのことで大変な資料を手に入れた。これは君で預かってもらえないだろうか」 
「俺で良ければ引き受けます。しかし、これはかなり酷い…」 
「ルーザーの香港におけるボーダー取引の実態だ…!!GINの王凱歌が調べてくれたデータと付き合わせる必要がある」 
「これを税務署で分析させましょう、ただしノンキャリアで現場一辺倒の人に頼みます」 
「そうだな、それがいい。キャリアだとハヤタの息がかかりやすい」
 広志はほのかに目配せする。 
「ゾーダに頼んで会計事務所に解析を掛けるわよ」 
「ああ、それがいい」
 

                               2 

「欅君、ハヤタ自動車の本社にアポは取ったか」 
「しっかり取りました、ご安心ください」
 厳しい表情で松坂は本社駐車場に車を止める。
 
「ようこそ、わざわざ我が社までお越し頂くとは…」 
「一切の茶菓子は不要だ。用件から手短に申し上げよう」
 ルーザー社長、垂水嘉一会長のほか、日本電力の橘克彦会長、太平洋商事の三枝寛二社長もその場にいる。松坂征四郎は鋭い目つきで言い放つ。 
「カルロス・ルーザー、あなたは何人殺して稼げばいいのか…」 
「な、何を…」 
「あなたが香港で行った不正なボーダー取引、全て把握している。なぜ行ったのか…」
 ルーザーは思わず黙り込んだ。  
「沈黙することは事実であることを自ら物語る。そうだろう」 
「金が欲しいか、それとも死を選ぶか…」 
「なおさら真実であることを自ら物語っているな。お前は自首して罪を償え」
 動揺する二人に松坂は淡々と語る。
 「くだらないミスを隠そうとして大きな嘘をつく、そうしても事は解決できないのだよ。ミスは誰でも犯すものだが、そのミスを隠そうとして嘘をつくことが問題ではないのかね」 
「どちらがどうだか、分かりますよ…」 
「やれやれ、認めないようですな…。よろしい、あなたには事実で話をつけるより他はありませんな」
 そういうと松坂は悠然と部屋を出て行く。
 

「そういうことになってしまった、我らがスポンサーが困っている」
 桐原剛造(ネロス警備保障社長)がビショップに話す。 
「あのGINが牙をむき出しにしたならやばすぎですよ。最悪死ぬまでムショ勤め、死体は徹底的に臓器移植に使われて最後は鮫かハイエナに食われて墓場にすら葬られませんぜ」 
「ため息が出てしまうが、仕方がない。我らがスポンサーの意向に添って、松坂を抹殺させよう」 
「聞いたか、サム!」 
「かしこまりました」
 渋い表情で話すサムといわれた緑色の髪の毛の男。
 
「ということで、ネロスに頼んでおきました、会長」 
「すまんな…」 
「我々の目標は高性能のモーターを搭載した電気自動車を販売することだけだ、そうでしょう」 
「君の出身母体である日本モータホールディングスも儲かる話だからな」
 垂水はルーザーに話す。 
「共存共栄、ですよ」 
「フッハッハッハ…。そうだろう」
 その話を聞いていた人影がいた、素早く彼女は女子トイレに駆け込んで用を足す素振りをしながら電話を掛ける。 
「もしもし、栞?ボクだよ、脇坂だけどじつは…」


                               3

 「ルーザーの過去を突き止めたか」 
「はい、奴の出身大学であるサンパウロ大学に問い合わせた結果、就職活動のデータが残っていました」
 日焼けしていたのは日向咲。今やGINで屈指のやり手になっていた。 
「そうか…。奴は経済学部を出て日本モーターブラジルに就職したようだが…」 
「はい、その他にもブラジルの名門自動車であるワグネルモーターやラビンソン百貨店を受けて、いずれも最終段階まで残ったそうですが落ちています」 
「そんな彼がなぜ日本モーター本社に行ったのだろうか…」
 広志は厳しい表情で近くにいた女性に聞く。 
「私に聞かなくても分かるでしょう、彼は成績を上げたのよ」 
「そんなワンパターンの答え、俺は欲しくはない。もう少し分析できないのか」
 厳しく聞かれてつまる彼女。彼女はあの怨み屋だった宝条栞だった。なぜ彼女がここにいるのかというと、懲役四年の刑期を終えて身元保証人がいない為困っていた彼女に亀田呑が自ら手をさしのべて身元保証人になった上、法律の知識を生かせる場所として選んだのが広志の事務所だった。広志は呑の頼みを引き受け、彼女を法律秘書に据えてハヤタ自動車の問題にも当たらせてきたのだった。 
「まだ勉強不足です、すみません」 
「いい、失敗するのは誰もある。あなたの欠点は経済の生きた姿を捉えられていないところだ」 
「ルーザーですが、日本モーターブラジルで5年連続グループ全体のトップセールスマンになって、日本に来たそうです。ただ、売る為にはダンピングなど手段も選ばなかった為軋轢が大きかったそうです」 
「なるほど、で大体そういう馬鹿はおべんちゃらなど保身にも強い。あのパルパティーン・ゼーラ議会前議長も真っ青極まりないわけだ」 
「あの人が気の毒です。あの人は権力の毒の恐ろしさを知っていたから引退したじゃないですか」 
「そうだったな。話を元に戻そう」
 セバスチャン・パルパティーンは3年前にゼーラ政界を引退し、今は科学アカデミアで政治学を教えている。
「あのルーザーの話に戻します。ルーザーは本社に移った後、失敗を何度か犯していますがそのたびに関係ない社員に責任を押しつけて逃げています」 
「大型取引を車両メーカーの東洋車両工業及びその子会社の東洋電機工業と交わして、それで格安契約になってしまったのをモーターの製造工場をフィリピンやカンボジアに建設して一部の技術者をそこに派遣させ、日本にあった工場はその分閉鎖したりしてそこで働いていた人達をほとんど営業職にして新規採用を停止したそうですね。工場跡地は大型商業施設にして地域経済はずたずただそうです」 
「そこまで調べたか。奴はそして究極のコスト削減をやらかした」 
「35歳で日本モーターの社長になった後はボーナスも諸手当も残業代も廃止して全従業員年俸制を導入し、反発する従業員は子会社に出向させて清算する手法で解雇を乱発しています。そこで得た金銭でモーター大手の東洋電装を買収して自動車関連産業にも参入しています。しかも北朝鮮地方への進出を強行して従業員解雇を強行したそうです」 
「人の屑ね」 
「まさしくその通りだ。相手にする価値もないのだが、とんでもない悪事をしているようだからね」
 苦々しい表情で広志が栞につぶやく。 
「それを突き止めるように私はCEOから教えられたんです」 
「その意識だけでも全然違うぞ、日向」 
「私からは面白いニュースが入ったわ。ハヤタに勤務している知り合いから、社長が『松坂には然るべく手を打った』と話していたそうよ」 
「おい、そのニュースを詳しく調べるんだ!場合によっては殺される可能性も否定できないぞ!!」 
「悪趣味ですね、相変わらず」 
「悲しいけど、人の不幸は他人にとっては蜜のようなものよ」 
「そこまでにしておけ。それと、ルーザーは香港によく出張しているがなぜだ」 
「香港市長のドン・ガンビーノが率いる上海証券によく出入りしています。でも、彼の取引内容はタックスヘイブンの為分かりません」 
「狡猾なことが行われているな…」
 広志は忌々しい表情を隠せない。ガンビーノといえば広東人民共和国の独裁政治に関わった人民労働党の流れを汲む人民党党首ではないか。広志が嫌う独裁者の一人である。広志がアメリカに8年前に研修に向かった際、レックス・ルーサーが独立党の代表としてアメリカ大統領に就任した。彼は世界中の紛争を解消すべく外交・治安の情報を共同で一括管理する世界共同政府構想を提唱し、クラーク・ケント副大統領を通じて広志に計画の実現で協力を要請してきた。 広志は快諾し、初代代表に推薦したのがルルーシュ・ランペルージュだった。最初ルルーシュは戸惑ったが盟友のシャア・アムロ・ガルマの三人が背中を押し、シャーリー夫人の勧めもあって『多極的社会実現の為』世界共同政府構想に参画したのだった。だが、ルーサーはその構想の実現を見ずに二年後に心不全でこの世を去り、ケントが大統領に就任したわけだ。葬式の際に広志はソマリアから戻り、志願してケントと共に自らルーサーの棺を担いだ。 ガンビーノは世界共同政府構想に激しく反発し、広東共和国が傘下を決めた際も最後まで反対した経緯がある。彼の率いる上海証券はヘッジファンドに強く、そこが出資していたのが日本にある上海証券ジャパンだった。そして、上海証券ジャパンが資金面で支援をしていたのがあのアイアンウッドファンドだったのだ。 
「元々アイアンウッドファンドは朝比奈ファンドと言われていたんですね。そこを上海証券が狙った…。しかも世界中の企業にTOBをかけてグリーンメーラーとして悪名をとどろかせた…」 
「ああ、朝比奈ファンドは朝比奈孝也が率いていたが出資者の藤堂寅太郎と垂水嘉一が紹介した上海証券ジャパンと共同で過半数の出資金を占めている。奴らは兄貴と縁がある、兄貴が経営しているアークヒルズファンドだが、元々は仕手筋に狙われていた難波工業だった。兄貴が俺の友人や山陰電鉄、オリナス鎌倉リゾーツと共同出資して会社の乗っ取りから守った上、生活関連を中心に投資するファンドに衣替えした。兄貴は東北から北海道の百貨店チェーンを買収した際も閉鎖する店舗を自らが買い取って別のチェーン店、食品ストアを存続会社にして統合して雇用を守り抜いた。経営が改善された後は大合同して元に戻したがね。その会社がこの前ユナイテッドリテイリングと経営統合したわけだ」 
「そんな都合のいいように話は進むかしら?」 
「確かにな。理想だけではご飯は食べられない。だが、現実はあくまでも未来への礎。俺は終わりのない未来を信じたい」 
「信念なき者の言葉には重みはない、というわけよ」
 ほのかが頷く。彼女も今や広志の右腕となってきっちり活躍している。 
「そのアイアンウッドを操っているのが誰か、そして大木忠信氏を巡る内紛を知っていた人物が彼の株式を高値で買い取った…」 
「となると答えが見えてくるわね…」 
「後は証拠が固まればの話だがね…」


                              4

「松坂さん、あなたはこのままでは殺されます!周辺に警備を行ってください!」
 広志が電話を掛ける。 だが、松坂は落ち着いていた。 
「殺されるときには覚悟はできている。私は君と出会って良かった…」 
「そんなこと言わないでください、剣星君達の夢はまだ実現できていなんですよ!?」 
「剣星はすでに揺るがない絆を手に入れた…。もう、安心できる」 
「そんな…!!」 
「君こそ気をつけたまえ。恐らくあの男達は君も狙いかねない…」
 そういうと松坂は電話を切る。 
「クソッ、何と言うことだ…!!宝条、君に動いてもらうより他はないな」 
「分かっているわ、すでに動いているわ。四和州田君にね」 
「まあ、彼しかおるまい…」
 苦々しい表情で広志はつぶやく。年老いた男が広志の肩に手をやる。 
「松坂先生は今津先生や安西先生とある誓いをしたようだ。そのためにも彼は警備を始めているはず。俺も動かないとな」 
「亀田さんにも迷惑をおかけします」 
「そんなことはねぇぜ、俺はアブレラと協力してサポートするからな」 
「私も脇坂蘭と協力するわ。彼女は年下だけど相当なやり手よ」 
「ああ…、君が褒めるほどだからな…」  


「ルーザー社長、あの男ですが然るべく手を打ちました、懇談会の際に始末します」 
「そうか…、わかった…」
 桐原剛造の言葉に頷くとルーザーは黙った。
----まさか、あの男が我が利益至上主義に反対するとは…!!  
『社長、こんな車を市場に出してハヤタ自動車の信頼をわざわざ潰すつもりですか!?』
 ルーザーの利益至上主義に反発し、品質優先主義を打ち出したのは片岡一樹だった。社運を懸けたスーパーカー・ライジングサンの販売段階で車の車輪がはずれたりブレーキが壊れたりするトラブルが相次いだ。それを改良するのに時間がかかるのにルーザーはコスト削減を優先するあまり技術開発に不熱心だった。 むしろ、移籍直後に大型契約を交わした日本モーターホールディングスの契約を消化させるべくノルマを次々と課したのだった。そのやり方に技術者は激しく反発した。このライジングサンはカーボン製の車体にハイブリッドエンジンを組み合わせたモノで燃費は優れていたが配線構造やブレーキ系統に大きな問題があった。だが、ルーザーは『車は五年持てば買い換える』という歪んだ思想で見ていた。
  そこでわざわざF1レーサーに車のテスト走行を頼んだのだった。その人物こそがマイケル・セナだったのだ。だが、結果は無惨だった、彼の運転した車はブレーキが壊れた上、フェンスに激突して炎上。彼は搬送先の病院で息を引き取ってしまった。大あわてしたハヤタ自動車は妻子を事実上監禁して口封じをはかった。しかも、ルーサーは事実を隠蔽してセナが生きているように見せかけ続けていた。 この事件がばれてしまい、一樹は告訴を決心した、だがルーサーの盗聴システムによって全ては把握されていた。一樹を5年前に雇った始末屋に襲わせた。その二人こそがコードネーム『マリン』・『ワリン』の二人だった。二人は一樹を拉致して意識を失わせ、搬入させた病院で電気ショック薬物投与により記憶操作を行った。 そして、生み出された人物が数学講師である佐治光太郎という人物だった。その間、一樹の妻である美咲は夫の行方を捜してはハヤタ関係者に連れ戻される繰り返しの果てに心労でなくなり、残された娘の里奈は真東輝・綾乃夫妻に引き取られた。叔父である片岡貢では拉致される確率が高いからと判断した結果だった。光太郎とされた一樹はそのまま川越に数学塾や2DKマンションをあてがわれてそのままハヤタから放り出された。アイアンウッドファンドが不正な手段で稼いだ利益は2兆円、しかも香港市長が事実上無税にしていたので懐も痛まない。しかも一樹やセナが入院していたのが若月会付属福島病院を改組したハヤタ記念財団付属福島病院だったのである。  


「ヒロ…、情報がだいぶ集まってきたぞ!」
 真東輝が広志の事務所に立ち寄ってきた。 
「輝先生も情報を把握しましたか…、ハヤタの資金が一部アイアンウッドファンドに流出しているという疑惑を把握されましたか…」 
「謎の損失引当金、そしてその分利益として計上される金…。ちょうど帳尻がぴったり合う」
 「しかも、アイアンウッドファンドのレバレッジとなって世界中の企業を混乱させている…」 
「だから、ハヤタは大嫌いなんだ!」
 輝が強く憤る。 
「真東先生、そんなに怒るのは体に悪いじゃないですか」 
「そうだったな」
 頭をかく輝。本郷由起夫は厳しい表情で資料を眺めている。 
「この資料はトップクラスだ、すぐに動かねばなるまい」 
「そうですね、お父さん」 
「今津顧問、私も賛成です。この資料を見るだけでも背筋が凍り付きます」
 今津博道GIN顧問も頷く。その時だ。ほのかが悲鳴を上げて電話を片手に部屋に入る。 
「ヒロ、大変よ!電話に出て!!」 
「分かった…」
 話を聞く広志。その表情が青ざめていくことを二人は悟った。 

「で、彼は…。そうか、ダメだったのか…。分かった、宝条はその場に残って現場の処理に当たれ。私は川越に美紅と一緒に向かう。…では」 
「どうしたのだ」 
「松坂征四郎が、殺された…!!」
 広志は悔しい表情を隠せない。

 一方…
「えっ!!?じいちゃんが!!?」
 剣星も征四郎の死の知らせを聞いてショックを受けた。
「どうしたの?剣星」
 彼の青ざめた顔を見たヨナが尋ねる。
「じいちゃんが…じいちゃんが…チクショウ!!」
「おじいちゃんがどうかしたの?」
「じいちゃんが…殺された…」
「えっ!!?」
「チクショウ…チクショウ!!」
 剣星は悔し涙を流しながらその場にくずれおちた…。

「ヒロ!すまん…!!」
 財前丈太郎GIN・CEOが土下座で謝る。 
「いや、謝るのは俺ではなく、遺族に対してだ。俺も彼らにわびねばなるまい」 
「ヒロ…!!」
 自ら広志は遺族の控える部屋に向かう。 
「高野先生が参りました…」 
「高野です、このたびの事件、我々の警備上の不手際でこうなってしまい申し訳ありません!」
 そう言うなり広志は遺族に土下座してわびる。剣星が驚く。 
「アンタがわびたってじいちゃんは帰らないんだ!じいちゃんを帰せよ!!」 
「分かる…、私もそうだった…」 
広志は悲しげな表情で松坂の亡き顔を眺めていた。
 「『若き頃の志や信念は権力に近寄れば近寄るほど汚されていく、志を持った若き青年将校達がこの国を作るべきだ』と彼は最後に言い残して、俺には『感情だけで人を裁くな』と戒めてこの世を去った…。ヒロを責めるのなら、俺にも責任がある…」 
「財前さん…」 
「ワシも同等の罪がある…、ワシも回すべき人を怠ったのだ…」
 
「財前、状況はどうなっていたのか」
 広志は状況を丈太郎から聞く。 
「松坂のじいさんが挨拶した直後に緑色の髪の毛の男が突然ナイフを取り出してじいさんにナイフを突き刺した。致命傷になってしまってじいさんは死んでしまった…」 
「犯人はどこへ行った」 
「事件の混乱で逃げていった。帽子が残っていたから、帽子を元に調べ上げることにした」 
「帽子しか唯一の手がかりがないのか…」 
「ヒロ!」
 そこへ駆けつけたのはシャア・アズナブル日本連合共和国上院議員だ。 
「アズナブル先生、連絡が遅くなり申し訳ありません」 
「仕方がない…。俺も松坂先生にはお世話になった、葬式には最後まで参加させてくれ。アムロやガルマも仲間と一緒に参列すると言うことだ」
 アムロ・レイもシャアと一緒に革新党所属の上院議員として国政で活躍していた。そして、千葉市長を勇退してガルマ・ザビもいよいよ上院議員選挙に革新党から立候補することが決まった。三人にとって松坂は大きな存在だった。 
「実は、私達三人は大きな夢があった…。『君が天下を取るまで生き続けよう』という夢だった…。それが、こんなテロで奪われるとは…」 
「安西先生、私も悔しい思いが今でも残っています…」
 広志は安西晋三に悲しげな表情で話す、なぜなら彼も実の両親を34年前のイムソムニアなるテロリストによって奪われた悲しい過去があり、悲しい過去を繰り返さないことを誓ってきた。その思いが踏みにじられたのだ…。  


 二日後…。
 松坂征四郎の葬儀は川越市の葬儀場でしめやかに執り行われた。彼の亡骸の入った棺を広志が自ら先頭に立って葬儀場に運び入れる。その他にも棺を葬儀場まで運び入れることを志願したのはシャア、丈太郎、剣星、今津と安西だった。

 式場では別れの言葉が読み上げられる。広志は「あなたにはさよならとは言わない、あなたの正義の信念は必ず我らが引き継いで後世に伝える」と悲しげな表情で別れの言葉を読み上げた。そして葬儀場から戻ってきた遺骨を仲田家が位牌と共に式場に移す。 広志は記者会見場に自ら出てきた。テレビ関係者からの葬式の質問には一切答えなかった。
 「葬式の内容については一切お話しするわけには参りません。一つ、私達からの声明文を読み上げたいと思います」
 テレビ関係者はその言葉に震えた。ここまで厳しい表情で広志がいるのはあのテロ事件以来だからだ。 
「犯人諸君、君達は卑怯だ。罪のない松坂先生の命を奪い取った君達の卑劣さ、断じて許すわけにはいかない。遺族の無念と、我らGINの誇り、そして松坂先生の正義の想いに懸けて君達を必ず正義の方の裁きの場に引きずり出す!覚悟するがいい!!」
 広志の怒りの声明文が読み上げられる。佐治光太郎はテレビでこの光景を見ていた。 
「…!!」
 つい最近頭の中で何かもやもやとしていたことが一つの大まかな流れにまとまった瞬間だった。 
「そうだ…!私は車のエンジニアだった!?」
 その瞬間、下腹部に痛みを感じて光太郎は思わず倒れた。これが、新たな悲劇の予兆とは誰もが気がつかなかった…!!



作者 後書き
 一つ目の大きな衝撃はこうして書き終えましたが、まだ大きな悲劇の予兆は残っています。 まず、今回の話で大まかな流れが皆さん読めたと思います。「冬のソナタ」からも一部アイデアを得ています。ただ、申し上げますが韓流というブームに乗ったわけではなく、この話は本質としてはパンドラの箱のようなモノだと思います。パンドラの箱には災いがありましたが最後に残ったのは希望でした。 その希望を最後に書き上げてこそがこの話の本質になるのかと思います。
 
著作権者 明示
「仮面ライダーキバ」 (C)テレビ朝日・石森プロ・東映
「パチンコ海物語」 (C)三洋物産
「ふたりはプリキュア」シリーズ (C)ABC・東映・東映アニメーション 原作:東堂いづみ
「一十郎とお蘭さま」 (C) 南条範夫・文藝春秋
「WildHalf」 (C)浅美裕子・集英社
「怨み屋本舗」 (C)栗原正尚・集英社
『機動戦士ガンダム』 (C)サンライズ・創通エージェンシー
『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』 (C)北芝健・渡辺保裕 
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